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馬の文献:内毒素血症(MacKay et al. 1999)

「実験的に誘導した馬の内毒素血症に対するポリミキシンB抱合体の治療効果」
MacKay RJ, Clark CK, Logdberg L, Lake P. Effect of a conjugate of polymyxin B-dextran 70 in horses with experimentally induced endotoxemia. Am J Vet Res. 1999; 60(1): 68-75.

この研究論文では、馬の内毒素血症(Endotoxemia)に対する、ポリミキシンBとデキストラン70の抱合体(Conjugate of polymyxin B-dextran 70)の治療効果を評価するため、15頭の実験馬において、ポリミキシンB抱合体の投与後に、リポ多糖類(Lipopolysaccharide: LPS)の投与によって実験的な内毒素血症状態(Experimental endotoxic condition)を作り出し、その後の臨床所見と血液所見のモニタリング、およびサイトカイン、乳酸、プロスタノイド等の血中濃度の測定が行われました。

結果としては、ポリミキシンB抱合体による前処置(Pretreatment)の後に、リポ多糖類の投与が行われた馬では、対照郡(Control group)の馬に比較して、有意に低い呼吸数、白血球数、サイトカインおよびプロスタノイド(TNF、IL-6、Tx-B2、PGF-alpha)の血中濃度を示しました。このため、内毒素血症を起こした馬に対しては、ポリミキシンB抱合体の投与によって、臨床的に有意な内毒素誘導性炎症の抑制作用(Inhibitory effects of endotoxin-induced inflammation)が期待できることが示唆されました。

ポリミキシンBは、高濃度では主にグラム陰性菌(Gram-negative)に対する抗生物質の作用を示しますが、低濃度ではリポ多糖類を中和(LPS neutralization)する作用を介して、内毒素誘導性炎症の発現を予防できると考えられています。この研究では、馬体が内毒素に暴露する前にポリミキシンB抱合体が投与されていれば、内毒素誘導性の炎症を十分に予防できるというデータが示されました。しかし、ポリミキシンBは、受容体に結合してしまったリポ多糖類を中和することは出来ないため、内毒素血症の発現が疑われる臨床症例に対しては、できるだけ早期にポリミキシンBを投与することが重要である、という警鐘が鳴らされています。

この研究では、ポリミキシンB抱合体が投与された馬において、一過性の頻呼吸、発汗(Transient tachypnea/sweating)、およびTx-B2活性の上昇が見られ、ポリミキシンB投与に起因する軽度の副作用(Mild adverse effects)が起きたことが示されました。しかし、ポリミキシンBが投与される15分前に、ケトプロフェンによる前処置が行われた場合には、このようなポリミキシンBによる副作用は認められませんでした。このため、内毒素血症の罹患馬の治療においては、ポリミキシンB投与に併せて、ケトプロフェンやフルニキシン・メグルミンなどの抗炎症剤を用いることで、副作用発現の危険を有意に減少させられる可能性が示唆されました。

一般的に、ポリミキシンBは腎毒性(Nephrotoxicity)、神経毒性(Neurotoxicity)、聴覚毒性(Ototoxicity)などを有することから、馬の臨床症例への使用は躊躇されてきました。幸いにも、この研究では、これらの毒性発現を示す血中酵素の濃度変化は認められませんでしたが、この研究に用いられたのは、全頭とも健常な実験馬であったことから、臨床症例におけるポリミキシンB投与の安全性を確認するデータにはなりえない、という考察がなされています。このため、実際に内毒素血症が疑われる疝痛馬においては、中程度~重度の脱水(Moderate to severe dehydration)に起因して、腎毒性や神経毒性を起こし易い病態におちいっている場合もあると考えられることから、ポリミキシンBの投与が選択される場合には、投与後の慎重なモニタリングを実施すると共に、十分な補液療法(Fluid therapy)を併用することで、ポリミキシンBの副作用の危険性を、最小限に抑えることが重要であると提唱されています。

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