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馬の病気:ポトマック熱

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ポトマック熱(Potomac horse fever)について。

ネオリケッチア菌(Neorickettsia risticii)(旧名:Ehrlichia risticii)の感染によって、急性下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患で、川沿いの飼養環境において特に多く発症が見られることが報告されています。馬におけるポトマック熱の伝播では、中間宿主である水生カタツムリ(Aquatic snail)もしくはトビケラ(Caddis flies)から排泄された、有尾幼虫(Cercaria)に汚染された飲水を介して感染が起きると考えられています。

ポトマック熱の羅患馬において、下痢に併発して見られる症状としては、発熱(Fever)、抑欝(Depression)、食欲不振(Anorexia)などが挙げられ、血液検査では、血液凝固障害(Blood coagulopathy)、好中球減少症(Neutropenia)、好中球核の左方移動(Left shift)、血小板減少症(Thrombocytopenia)、フィブリノーゲン増加症(Hyperfibrinogenemia)などが見られます。また、重篤な内毒素血症(Endotoxemia)を続発して、蹄葉炎(Laminitis)の合併症を引き起こす危険が高いことも知られています。

ポトマック熱の診断においては、臨床症状と血液検査は他の下痢疾患と類似していることから、風土性(川沿いでの飼養)とサルモネラ症(Salmonellosis)の陰性反応で、推定診断が下されることが一般的です。IFA法やELISA法による血清抗体価(Serum antibody titer)の測定も試みられますが、好発地域では下痢を起こさなくても高抗体価を示すため、偽陽性(False positive results)が多いという問題点が指摘されています。また、PCR法を用いて、白血球中のネオリケッチア菌を高感度に検知する診断手法も試みられています。多くの症例において、類似疾患であるサルモネラ症との鑑別診断が不確定であったり、病態悪化に伴ってサルモネラ症を続発する危険を考慮して、患馬を速やかに隔離馬房(Isolation stall)に移動させる事が重要です。

ポトマック熱の根治療法としては、脂溶性抗生物質(Lipid soluble antibiotics)であるOxytetracyclineの経静脈投与(Intravenous administration)が有効で、ネオリケッチア菌の感染馬では24~72時間で下痢症状の改善が見られることが報告されています。また、同じく脂溶性抗生物質であるDoxycyclineも治療効果が高いことが知られていますが、経口投与(Oral administration)を要するため、重度の消化器症状を呈する症例では、腸管からの薬剤吸収が充分に起きない可能性も示唆されています。また、腸炎の改善のために非ステロイド性抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与を行う場合には、粘膜治癒を促進する作用を持つプロスタグランディンEを拮抗するという副作用があることを充分に考慮して、慎重に投与量および投与期間を決定することが大切です。

ポトマック熱の治療に際しては、全身性抗生物質療法(Systemic anti-microbial therapy)に併行して、補液療法(Fluid therapy)による再水和(Rehydration)と電解質不均衡(Electrolyte imbalance)の改善を実施することも重要で、難治性の脱水症状を呈した羅患馬に対しては、高張食塩水(Hypertonic saline)の投与後に等張食塩水(Isotonic solution)を補液したり、高免疫血漿(Hyperimmune plasma)やヒドロキシエチル澱粉溶液(Hydroxyethyl starch)などのコロイド投与によって血漿膠質浸透圧(Plasma oncotic pressure)を上昇させ、より効果的に再水和を施す療法が実施される場合もあります。

ポトマック熱に対するワクチン投与では、菌株の相違(Difference in strain)によって耐性が低かったり(Low antigenicity)、抗体の産生が不十分(Poor antibody production)であるため、下痢症の発現を完全には予防できない事が知られています。しかし、ワクチン接種馬においては、病態の重篤度を軽減する効能が期待できることから、川沿いの飼養環境では全ての馬に接種することが推奨されています。

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