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馬の文献:内毒素血症(Moore et al. 1986)

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「内毒素血症の馬におけるアラキドン酸代謝調節:フルニキシン・メグルミン、フェニルブタゾン、トロンボキサン合成酵素選択抑制剤の比較」
Moore JN, Hardee MM, Hardee GE. Modulation of arachidonic acid metabolism in endotoxic horses: comparison of flunixin meglumine, phenylbutazone, and a selective thromboxane synthetase inhibitor. Am J Vet Res. 1986; 47(1): 110-113.

この研究論文では、馬の内毒素血症(Endotoxemia)に対する、シクロオキシゲナーゼ抑制剤(Cyclooxygenase inhibitor)およびトロンボキサン合成酵素抑制剤(Selective thromboxane synthetase inhibitor)の治療効果を比較するため、フルニキシン・メグルミン(Flunixin meglumine)、フェニルブタゾン(Phenylbutazone)、およびトロンボキサン合成酵素の選択抑制剤の投与後に、リポ多糖類(Lipopolysaccharide)の投与によって実験的な内毒素血症状態(Experimental endotoxic condition)を作り出し、その後の臨床所見と血液所見のモニタリング、およびトロンボキサン(Thromboxane B2: TxB2)、プロスタサイクリン(Prostacyclin)、乳酸(Lactate)の血漿濃度の測定が行われました。

結果としては、フルニキシン・メグルミンによる前処置(Pretreatment)の後に、リポ多糖類の投与が行われた馬では、対照郡(Control group)の馬に比較して、有意に低いトロンボキサン濃度、プロスタサイクリン濃度、および乳酸濃度を示しました。一方、フェニルブタゾンによる前処置の後に、リポ多糖類の投与が行われた馬では、対照郡の馬に比較して、有意に低いトロンボキサン濃度と乳酸濃度を示しましたが、プロスタサイクリン濃度には有意差は認められませんでした。このため、内毒素血症の罹患馬に対しては、フェニルブタゾンよりもフルニキシン・メグルミンのほうが、より効果的に全身性の炎症反応(Systemic inflammatory response)の抑制を達成できることが示唆されました。

この研究では、トロンボキサン合成酵素選択抑制剤による前処置の後に、リポ多糖類の投与が行われた馬では、対照郡の馬に比較して、有意に低いトロンボキサン濃度を示しましたが、プロスタサイクリン濃度、乳酸濃度、PCV値などには有意差は認められませんでした。このため、馬の内毒素血症の治療に際しては、トロンボキサン合成酵素抑制剤の投与は、シクロオキシゲナーゼ抑制剤の投与ほどの治療効果は期待できないことが示唆されました。

一般的に、馬の内毒素血症は、内毒素が引き金因子(Triggering factor)となって生じる、全身性炎症反応症候群(Systemic inflammatory response syndrome)、および多臓器機能不全症候群(Multiple organ dysfunction syndrome)を含む、敗血症症候群(Sepsis syndrome)の病態を指し、その治療法としては、心血管系救急蘇生(Cardiovascular resuscitation)や循環内毒素の中和療法(Neutralization of circulating endotoxin)に併行して、多くの症例において、内毒素誘導性炎症の抑制(Inhibition of endotoxin-induced inflammation)が試みられます。この研究論文では、この際の治療薬として、トロンボキサン合成酵素抑制剤やフェニルブタゾンに比較して、フルニキシン・メグルミンの投与によって、より良好な治療効果が期待されるというデータが示されました。

この研究では、フェニルブタゾンおよびフルニキシン・メグルミンのいずれも、馬体がリポ多糖類に暴露される15分前に薬剤投与が行われており、内毒素が引き金となって始まる一連の炎症反応の抑制効果が示されています。しかし、一般的に、内毒素血症が始まってしまった後では、シクロオキシゲナーゼ抑制を介しての抗炎症効果は低いと考えられ、実際の疝痛症例の治療においては、頻脈(Tachycardia)、粘膜うっ血(Congested mucous membrane)、歯肉粘膜への毒素線の出現(Toxic line on gingival mucosa)などの末期症状が現れる前に、薬剤投与を行うことが重要であると提唱されています。また、開腹術(Celiotomy)によって、大結腸捻転(Large colon volvulus)や小腸絞扼(Small intestinal strangulation)が発見された場合には、罹患部位の腸管を外科的に整復(Surgical reduction)することによって、捻転&絞扼箇所に溜まっていた内毒素が全身に回ることを考慮して、術中において速やかに抗炎症剤投与を実施することが重要であると考えられています(リポ多糖類抗血清やポリミキシンB抗生物質の投与についても同様)。

馬に用いられる非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)としては、フルニキシン・メグルミンやフェニルブタゾンの他に、ケトプロフェン(Ketoprofen)およびエルテナック(Eltenac)が挙げられます。このうち、ケトプロフェンは、ロイコトリエン経路の部分的抑制作用(Partial inhibiting effect of leukotriene pathway)を有することから、フルニキシン・メグルミンよりも内毒素血症への治療効果が高いという仮説がなされていますが(MacAllister et al. JAVMA. 1993; 202: 71)、体外実験(In vitro experiment)における炎症介在物質の変動に関しては、ケトプロフェンとフルニキシン・メグルミンのあいだに有意差は認められておらず(Jackman et al. Can J Vet Res. 1994; 58: 138)、フルニキシン・メグルミンよりも高価になりがちなケトプロフェンを敢えて選択する利点は示されていません。一方、エルテナックは、実験的な内毒素血症への投与試験では、発熱(Fever)や肺高血圧(Pulmonary hypertension)を回復させる効果が報告されており(MacKay et al. EVJ Suppl. 2000; 26)、内毒素血症の罹患馬に対しても、フルニキシン・メグルミンよりも優れた抗炎症作用を期待できる可能性もあると推測されています。

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