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馬の文献:食道閉塞(Covington et al. 2004)

「脳幹黒色腫に起因して回帰性食道閉塞および嚥下障害を発症した馬の一症例」
Covington AL, Magdesian KG, Madigan JE, Maleski K, Gray LC, Smith PA, Wisner ER. Recurrent esophageal obstruction and dysphagia due to a brainstem melanoma in a horse. J Vet Intern Med. 2004; 18(2): 245-247.

この症例論文では、脳幹黒色腫(Brainstem melanoma)に起因して、回帰性食道閉塞(Recurrent esophageal obstruction)および嚥下障害(Dysphagia)を発症した馬の一症例が報告されています。

この症例馬は、13齢の葦毛アラビアン牝馬で、慢性の体重減少(Chronic weight loss)と十日間にわたる鼻汁排出(Nasal discharge)の病歴を示しました。内視鏡検査(Endoscopy)では、尾側頚部食道の通過障害(Esophageal obstruction in the caudal cervical esophagus)が認められ、胃カテーテルを介しての食道洗浄(Esophageal lavage)によって閉塞部位の遊離が達成されましたが、患馬は一ヵ月後に食道閉塞を再発して来院し、再び胃カテーテルによる閉塞箇所の治療が行われました。

その後、回帰性食道閉塞の原因疾患の鑑別が試みられましたが、頭部レントゲン検査(Head radiography)および診断麻酔(Diagnostic anesthesia)によって顎関節異常(Temporomandibular joint)は除外診断(Rule-out)され、また、造影レントゲン検査(Contrast radiography)および超音波検査(Ultrasonography)によって食道運動障害(Esophageal motility disorder)、食道狭窄(Esophageal stricture)、食道憩室(Esophageal diverticula)なども除外されました。

その一ヵ月後に、患馬は三たび食道閉塞を再発して来院し、神経学的検査(Neurologic examination)によって、舌咽神経(Glossopharyngeal nerve: Cranial nerve IX)および舌下神経(Hypoglossal nerve: Cranial nerve XII)の異常を示唆する舌緊張度の低下(Reduced tongue tone)が確認され、迷走神経(Vagus nerve: Cranial nerve X)の異常を示唆する咳嗽反射の消失(Lack of cough reflux)も認められました。さらに、姿勢反応検査(Posture reaction evaluation)では、後肢を正中線を越えて反対側肢の前方に移動させた際に、正常踏着位置へと肢を戻すのに長時間を要する所見が認められました。これらの検査結果は、中枢神経病巣(Central neurologic lesion)、特に脳幹異常を示唆するものであったことから、CT検査による脳幹部位の診断が選択されました。

CT検査像では、大後頭孔(Foramen magnum)の近辺の脳幹部位において、大型で高密度の腫瘤(Large/Hyperdense mass)が認められ、環椎後頭部位(Atlanto-occipital site)における大槽部採液(Cisterna magna tap)では、脳脊髄液(Cerebrospinal fluid)中にメラニン形成細胞(Melanocyte)が発見されました。この結果、腫瘤のサイズ、および形成箇所から、外科的切除は困難であり、予後は不良であることが推測されたため、残念ながら患馬は安楽死(Euthanasia)となりました。剖検(Necropsy)では、背側脳幹(Dorsal brainstem)における6.5cm大の腫瘤が見つかり、病理組織学的検査(Histopathological examination)によって脳幹黒色腫の確定診断(Definitive diagnosis)が下されました。

一般的に馬の黒色腫は、転移を伴わない遅延性成長(Slow growth without metastasis)を呈する場合が多いことが知られています。他の文献によれば、原発性の硬膜外黒色腫(Primary epidural melanoma)から不全対麻痺(Paraparesis)を起こした症例や(Traver et al. JAVMA. 1977; 170: 1400)、脳幹への悪性黒色腫の転移(Metastasis)から嚥下障害および舌筋緊張低下(Lingual hypotonia)が見られた症例などの報告がありますが(Kenney et al. Prog Vet Neurol. 1993; 4: 11)、食道閉塞の併発は報告されていません。しかし、今回の症例のように、複数回に及ぶ回帰性食道閉塞に合わせて、脳神経異常や他の神経器症状が認められた場合には、脳幹異常に起因する食道疾患の発現を鑑別診断のリストに含めるべきであるという考察がなされています。

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