RSS

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

馬の病気:サルモネラ症

20130419_Blog_Salmonellosis_Pict1.jpg

サルモネラ症(Salmonellosis)について。

サルモネラ菌血清B型に属する、S.enterica typhimuriumおよびS. enterica agonaの感染に起因して、急性の下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患で、原因菌としてはS. enterica typhimuriumが最も頻繁に分離されることが報告されています。馬におけるサルモネラ症は、外気温の上昇(High ambient temperature)や輸送などのストレスで、飼養環境に常在しているサルモネラ菌に対する耐性低下が起こることで発症すると考えられており、また、給餌内容の急激な変化(Rapid feeding change)、経口抗生物質(Oral antibiotics)の投与、消化器官の外科手術(Alimentary surgery)などで大腸細菌叢(Colonic flora)が障害され、細菌への感受性(Susceptibility)が高まり感染に至ることも素因として挙げられています。一般的に成馬のサルモネラ症では、全身感染には至らず全腸炎(Enterocolitis)を呈しますが、幼馬の症例では粘膜侵襲(Mucosal invasion)したサルモネラ菌が大食細胞内で増殖して、敗血症(Septicemia)を続発する場合が多いことが示されています。

サルモネラ症の症状としては、初期病態では発熱(Fever)と食欲不振(Anorexia)の症状が観察され、内毒素血症(Endotoxemia)を併発すると、頻脈(Tachycardia)、頻呼吸(Tachypnea)、毛細血管再充満時間の遅延(Prolonged capillary refilling time)などが見られます。初期病態での血液検査では、好中球減少症(Neutropenia)とリンパ球減少症(Lymphopenia)、血小板減少症(Thrombocytopenia)、フィブリノーゲン増加症(Hyperfibrinogenemia)などが見られます。サルモネラ症の病態悪化に伴って、進行性の下痢と脱水(Dehydration)を生じ、腸蠕動音の消失(Decreased peristalsis)が聴診され、直腸検査(Rectal exmination)では、大結腸および盲腸壁の浮腫と充満(Colonic/Cecal wall thickening and distension)が触診されます。血液検査では、好中球増加性白血球増加症(Neutrophilic leukocytosis)、好中球核の左方移動(Left shift)、腎前性高窒素血症(Prerenal azotemia)が起こり、大腸炎の悪化に伴って、低アルブミン血症(Hypoalbuminemia)、低グロブリン血症(Hypoglobulinemia)、低カリウム血症(Hypokalemia)、低ナトリウム血症(Hyponatremia)、低カルシウム血症(Hypocalcemia)、代謝性酸性血症(Metabolic acidosis)などを呈します。

サルモネラ症の診断は、糞便培養(Fecal culture)による原因菌の分離が試みられますが、診断感度を高めるため五日連続で糞便検査を実施することが重要で、また、直腸生検(Rectal biopsy)による検体を用いての細菌培養、もしくはPCR法による細菌の探知も試みられています。幼馬および全身感染を疑う成馬の症例では、血液培養によって菌血症(Bacteremia)の診断が行われます。サルモネラは馬における最も重要な院内感染(Nosocomial infection)の原因菌であるため、糞便培養による推定診断が下される前でも、サルモネラ症が疑われる全ての患馬を速やかに隔離馬房(Isolation stall)に移動させることが必須です。またサルモネラ陰性の下痢発症馬においても、糞便培養の感度の低さ、病態悪化に伴うサルモネラ症の続発を考慮して、隔離方針を継続する事が一般的です。

サルモネラ症の治療では、補液療法(Fluid therapy)による再水和(Rehydration)と電解質不均衡(Electrolyte imbalance)の改善を第一指針とします。また、これらの補液療法に不応性を示した症例に対しては、高張食塩水(Hypertonic saline)の投与後の等張食塩水(Isotonic solution)の補液、または高免疫血漿(Hyperimmune plasma)やヒドロキシエチル澱粉溶液(Hydroxyethyl starch)などのコロイド投与を介して、血漿膠質浸透圧(Plasma oncotic pressure)を上昇させて、より効果的に脱水改善を試みる療法が応用される場合もあります。非ステロイド性抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)を用いて腸炎の解消が実施される症例もありますが、粘膜治癒を促進する作用を持つプロスタグランディンEを拮抗する副作用があるため、投与は慎重に行うことが重要です。また、次サリチル酸ビスマス(Bismuth subsalicylate)の投与による炎症と大腸分泌の抑制や、DMSO投与による遊離基(Free radical)の除去などが併用される場合もあります。

サルモネラは細胞内菌(Intracellular organism)であるため、根治療法のためには脂溶性抗生物質(Lipid soluble antibiotics)である、Trimethoprim-sulfa、Enrofloxaxin(関節軟骨への毒性に注意)、Chloramphenicol(投与者への肝毒性に注意)等が有効ですが、腸炎自体の改善につながる症例は稀であるため、使用には賛否両論(Controversy)があります。そのため抗生物質投与は、菌血症および敗血症を起こした患馬に対してのみ実施されることが一般的です。経過が数日以上に及ぶ症例に対しては、ブドウ糖やアミノ酸溶液などによる経静脈栄養補助(Parenteral nutritional support)が行われ、また、カロリー摂取量を維持しながら大腸運動負荷を抑えるため、繊維質を減らし(全量の三割以下)、穀物またはペレット食を一日4~6回給餌する指針が推奨されています。

Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
スポンサーサイト

プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 神奈川県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

ブログメニュー

FC2カウンター

リンク

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

最新記事

月別アーカイブ

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

カテゴリ

全記事表示リンク

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
357位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
34位
アクセスランキングを見る>>

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

FC2ブログランキング

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。