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馬の文献:食道閉塞(Craig et al. 1989)

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「61頭の馬の食道疾患:外科的および非外科的療法の治療効果」
Craig DR, Shivy DR, Pankowski RL, Erb HN. Esophageal disorders in 61 horses. Results of nonsurgical and surgical management. Vet Surg. 1989; 18(6): 432-438.

この症例論文では、馬の食道疾患(Esophageal disorders)に対する外科的および非外科的療法の治療効果を評価するため、様々な種類の食道疾患を呈した61頭の馬の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、61頭の食道疾患の内訳は、食道閉塞(Esophageal obstruction)が27頭と最も多く、次いで、食道狭窄(Esophageal stricture)が18頭、食道穿孔(Esophageal perforation)が11頭、食道憩室(Esophageal diverticula)が5頭となっていました。そして、これらの罹患馬における短期生存率は78%、長期生存率は52%にとどまり、慢性の食道通過障害(Chronic esophageal obstruction)を呈した馬の割合も37%にのぼっていました。このため、馬の食道疾患の予後は一般的に良好~中程度で、予後不良を呈して安楽死(Euthanasia)となる馬の割合も、比較的に多いことが示唆されました。

この研究では、27頭の食道閉塞の罹患馬のうち、25頭において非外科的療法(胃カテーテルを介しての食道洗浄や頚部マッサージ)による閉塞部位の遊離が達成されましたが、このうち五頭は誤嚥性肺炎(Aspiration pneumonia)などの合併症のため退院前に安楽死となり、また、退院した馬の41%において、慢性の食道閉塞が見られました。他の二頭では、食道切開術(Esophagotomy)を介しての、食道閉塞部位の外科的整復を要し、このうち一頭は蹄葉炎(Laminitis)の合併症で安楽死となりました。食道閉塞の罹患馬の全体としては、78%の短期生存率と、49%の長期生存率が報告されています。このため、馬の食道閉塞では、外科手術を要せずに遊離できる症例が殆どであるものの、術後合併症によって予後不良となる場合も多いことが示唆されました。

この研究では、18頭の食道狭窄の罹患馬のうち、九頭において非外科的療法による狭窄部位の整復が試みられましたが、誤嚥性肺炎などの合併症のため、その長期生存率は22%(2/9頭)にとどまりました。他の九頭では、食道筋切開術(Esophagomyotomy)および食道切除&吻合術(Esophageal resection and anastomosis)を介しての狭窄部位の拡張化や整復が試みられ、その長期生存率は44%(4/9頭)で、非外科的療法が行われた馬より有意に高い生存率を示しました。このため、馬の食道狭窄では、予後は中程度~不良であるものの、積極的な外科的治療によって、狭窄部位の良好な整復&治癒が見られる症例もあることが示唆されました。また、他の文献では、経過が60日以上に及ぶ慢性の食道狭窄では、保存性療法(Conservative therapy)には不応性(Refractory)を示す場合が多いことから、食道筋切開術や食道切除&吻合術による外科療法を積極的に応用するべきである、という提唱もなされています(Todhunter et al. JAVMA. 1984;184:784)。

この研究では、11頭の食道穿孔の罹患馬のうち、七頭において非外科的療法による治療が試みられましたが、その全頭が安楽死となりました(長期生存率:0%)。他の四頭では、食道切開術と病巣清掃による治療が行われ、その長期生存率は50%(2/4頭)で、この生存した二頭の馬では、術後の50日および80日で、穿孔部位の二次性治癒が達成されました。このため、馬の食道穿孔では、外科治療による穿孔部位の清掃&洗浄を要することが示唆されましたが、その予後は不良である症例が多いというデータが示されました。

この研究では、五頭の食道憩室の罹患馬のうち、一頭では非外科的療法による治療が選択され、他の四頭では、食道粘膜反転術(Esophageal mucosal inversion)を介しての外科治療が行われ、この五頭のうち全頭が、退院後一年以上生存したことが確認されています(長期生存率:100%)。このため、馬の食道憩室は、他の食道疾患よりも予後は良好で、殆どの症例で外科的療法による憩室部位の整復&治癒が期待されることが示唆されました。

この研究では、61頭の食道疾患の罹患馬のうち、最も多く見られた合併症は誤嚥性肺炎で(発症率:72%)、また、誤嚥性肺炎を起こした馬では、起こさなかった馬に比較して、安楽死となる可能性が有意に高くなることが示されました。さらに、誤嚥性肺炎を続発した場合には、生存後にもその二割以上において、慢性呼吸器疾患に起因する使役目的や運動内容の変化を要したことが報告されています。このため、馬の食道疾患では、その病態に関わらず、全ての症例に対して、胃カテーテルの留置(Indwelling stomach tube)や予防的抗生物質療法(Prophylactic antibiotic therapy)によって、積極的に誤嚥性肺炎の予防に努めることが重要であると考察されています。

この研究では、外科的治療が行われた食道疾患の罹患馬のうち、53%において食道周囲感染(Peri-esophageal infection)を続発し、また、食道内腔に達する術式(食道切開術、食道切除&吻合術)では、食道内腔に達っしない術式(食道筋切開術、食道粘膜反転術)に比較して、食道周囲感染の危険が有意に高く、また、術後の長期生存率は有意に低いことが示されました。さらに、外科治療後に慢性の食道瘻孔(Chronic esophageal fistula)が形成された馬は、特に食道狭窄(8/18頭)および食道穿孔(4/11頭)の罹患馬に多かったものの、瘻孔の存在自体は、長期生存率には有意に影響しないというデータが示されました。

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