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馬の病気:正中離開

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正中離開(Diastemata)について。

正中離開(いわゆるスキッ歯)は、一般的に臼歯(Cheek teeth)のあいだに隙間を生じた病態を指しますが、切歯(Incisor teeth)に正中離開を生じる個体も見られます。正中離開の罹患馬では、この異常な歯間隙(Abnormal interdental space)に飼料が詰まることで、悪臭を呈する二次性歯周感染(Secondary malodorous periodontal infection)を引き起こし、特に、咬合部位(Occlusal aspects)における隙間が狭く(2-3mm)、歯肉との境界部(Gingival margin)にかけて隙間が広がっている状態(いわゆる弁状正中離開:Valve diastemata)において、重篤な臨床症状を示し易いことが知られています。

正中離開の病因としては、通常はやや扇形に配列している臼歯の角度が不十分である状態(Insufficient cheek teeth angulation)や、臼歯の出現部位が離れ過ぎている状態(Wide dental buds)などの、歯科構造の異常(Inadequate dental confirmation)に加えて、伸び過ぎた臼歯の前後の歯が頬側変位すること(Buccal displacement of cheek tooth adjunct to overgrown tooth)によっても正中離開が起こりうると考えられています。

正中離開の臨床症状としては、咀嚼不全(Inadequate mastication)、食欲不振(Anorexia)、慢性体重減少(Chronic weight loss)、プアパフォーマンスなどが認められますが、これらの症状は必ずしも正中離開に特異的ではありません。また、慢性経過を示した病態では、歯根尖部感染(Periapical infection)を続発して、排液孔形成(Draining tract formation)、腹側下顎腫脹(Unilateral ventral mandibular swelling)(下顎臼歯の正中離開の場合)、二次性上顎副鼻腔炎(Secondary maxillary sinusitis)に起因する悪臭性の慢性片側性鼻汁排出(Malodorous, chronic, unilateral nasal discharge)(上顎臼歯の正中離開の場合)等が見られる事もあります。

正中離開の診断は、口腔内の視診によって下されますが、罹患している臼歯の場所によっては、頭部レントゲン検査(Head radiography)や口腔内視鏡検査(Oral endoscopy)によって、発症している正中離開の数や箇所、正中離開の幅の評価を要する症例もあります。また、慎重な歯科検査(Dental examination)によって、類似症状を示す他の歯科疾患を除外診断したり、頭部レントゲン検査によって歯根膿瘍(Tooth root abscess)や副鼻腔炎の併発を確かめる事も重要です。

正中離開の治療方針は、罹患馬の年齢によって異なります。一般的に、成馬における正中離開の症例では、穿子(Burr)を用いて正中離開を6~8mmまで広げることで、歯間隙に入り込んだ飼料が自然に抜け落ちるようにさせる手法が有効です。この際には、正中離開の頭側(=後ろ側)に位置している歯の吻側部位(Rostral aspect of the tooth positioned caudal to diastemata)を主に削ることで歯髄の露出(Dental pulp)を最小限に抑える事と、充分な冷却水を用いながら削ることで歯髄の熱性損傷(Thermal pulpar damage)を防ぐことが重要です。また、一箇所の正中離開のみを生じた症例では、歯間隙の前部または後部に位置する臼歯を抜歯(Tooth extraction on one side of diastemata)する療法が選択される場合もあります。

一方、若齢馬において、臼歯の永久歯(Permanent cheek teeth)が生えてくる時期に生じた正中離開では、永久歯が伸びてくる過程で自然に歯間隙が塞がることから、上述のように正中離開の前後の臼歯を削って隙間を広げたり、抜歯を実施する治療法は適切ではないという警鐘が鳴らされています。このため、若齢馬における正中離開の症例では、必ず頭部レントゲン検査を行って、レントゲン上で臼歯の歯根角度が正常であることが確認されれば、歯間隙に詰まった飼料を除去してプラスチック樹脂を充填することで、再び飼料が詰まるのを一時的に予防する治療法が選択されます。術後には、正中離開が完全に塞がる前に、プラスチック樹脂が外れて症状の再発を起こすこともあるため、定期的な歯科検診による慎重なモニタリングを実施することが重要です。

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