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馬の病気:術後腸閉塞

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術後腸閉塞(Post-operative ileus)について。

術後腸閉塞は、小腸の切除や吻合術(Small intestinal resection/anastomosis)などの消化器系手術の術後に、腸蠕動の減退(Decreased bowel peristalsis)および通過障害(Obstruction)を起こす病態を指します。術後腸閉塞の病因としては、腸管筋層の炎症(Inflammation in intestinal muscularis)に起因する腸内神経系抑制(Inhibition of enteric nerve system)が挙げられており、抑制性神経伝達物質(Inhibitory neurotransmitter)である一酸化窒素(Nitric oxide)の過剰生成、交感神経節反射( Neural refluxes to sympathetic ganglia)、鎮静剤(Sedation)の過剰投与、内毒素(Endotoxin)によるアルファ2受容体賦活化(Alpha-2-adrenoreceptor activation)なども素因になると考えられています。

術後腸閉塞の臨床症状は、麻酔覚醒(Anesthetic recovery)の24時間以内にあらわれることが一般的で、軽度の疝痛症状(Mild colic)、抑鬱(Depression)、頻脈(Tachycardia)、脱水(Dehydration)、腹鳴音の減退(Decreased borborygmi)、経鼻カテーテルによる胃逆流液排出(Nasogastric reflux)などの症状が見られます。直腸検査(Rectal examination)では、小腸膨満(Small intestinal distension)と腸壁浮腫(Intestinal wall edema)が触知され、また、腹腔超音波検査(Abdominal ultrasonography)では、小腸膨満に伴う内径拡張(Increased luminal diameter)と小腸壁の肥厚(Small intestinal wall thickening)が認められます。

術後腸閉塞の治療では、継続的な胃除圧(Gastric decompression)によって胃破裂(Gastric rupture)を予防しながら、補液療法(Fluid therapy)による脱水および電解質不均衡(Electrolyte imbalance)の補正と、フルニキシン投与による腸壁炎症の改善を試みます。消化管運動改善薬(Prokinetic drugs)としては、Lidocaine およびMetoclopramideが最も一般的に使用されていますが、下記のような他の薬剤においても術後腸閉塞への効能が示唆されています。

Lidocaineは、交感神経副腎反応(Sympathoadrenal response)の抑制による循環カテコールアミンの減少(Reduction of circulatory catecholamine)、消化管運動の減退を司る一次求心性神経の抑制(Inhibition of primary afferent neuron)、直接性の平滑筋刺激(Direct smooth muscle stimulation)などの作用を介して、術後腸閉塞における腸蠕動の活性化を起こす効能が示されており、また、近位十二指腸(Proximal duodenum)の収縮性増加(Increased contractility)、近位小腸炎(Proximal enteritis)の発症馬における胃内容物排出量の減少などの効果が期待できる事が報告されています。

Metoclopramideは第一世代ベンザマイド(First generation benzamide)で、ドーパミン受容体拮抗(Dopamine receptor antagonism)、5ハイドロキシトリプタミン4受容体活性(5-HT4 receptor agonism)、5ハイドロキシトリプタミン3受容体拮抗(5-HT3 receptor antagonism)などの作用を介して、胃および小腸の収縮活動を刺激することが示されており、胃逆流液排出の量と期間を減退させる目的で、術後腸閉塞の羅患馬に対して投与されています。Metoclopramideは、脳血管門(Blood brain barrier)を容易に通過するため、中枢神経のドーパミン受容体の拮抗作用(Antagonism effect on central DA2-receptor)に起因して、癲癇発作(Seizure)などの神経症状を呈する可能性が指摘されています。

第二世代ベンザマイド(Second generation benzamide)であるCisaprideは、ドーパミン受容体には関与せず、5-HT4もしくは5-HT3受容体拮抗を介して作用し、術後腸閉塞の症状を改善させることが報告されており、また、大腸便秘(Large intestinal impaction)の解消、グラスシックネス(Grass sickness)の治療、内毒素(Endotoxin)に起因する蠕動運動不全(Motility dysfunction)を減弱させる可能性なども示唆されています。Cisaprideは、遅延整流性カリウムチャンネルの遮断(Blockage of delayed rectifier potassium channel)を引き起こすため、倒錯性心室頻拍(Torsades de pointes)や致死性不整脈(Fatal arrhythmia)などの副作用を起こす危険性が報告されています。

術後腸閉塞では、交感神経活動亢進(Sympathetic hyperactivity)の関与も指摘されているため、アルファアドレナリン拮抗薬(Alpha-adrenergic antagonists)であるAcepromazineとYohimbineの投与によって、術後腸閉塞の重症度を減退させる効果も示唆されています。

副交感神経刺激薬(Parasympathomimetic drug)である、BethanecholとNeostigmineも術後腸閉塞の治療に応用されることがあります。しかし、Bethanecholは胃内物排出を速める効果が知られていますが、Metoclopramideよりも消化管運動の促進作用が低く、またNeostigmineは、大結腸運動改善には有効であるものの、小腸疾患に対する治療効果は低いことが示唆されています。

Erythromycinはモチリン活性(Motilin agonism)を介して、近位空腸(Proximal jejunum)の収縮を促し、術後腸閉塞における蠕動促進作用が期待できると考えられていますが、重度のクロストリディウム大腸炎(Clostridium colitis)を誘発する副作用が報告されています。

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