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馬の病気:食道閉塞

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食道閉塞(Esophageal obstruction)について。

食道(Esophagus)に摂食物等が詰まる疾患で、咀嚼不全(Poor mastication)、乾燥した飼料の給餌、過食、異物(Foreign body)の摂食などで引き起こされる一次性病態(Primary disorder)と、食道の狭窄化(Stricture)や蠕動運動の減退(Reduced peristaltic movement)などで誘発される二次性病態(Secondary disorder)に分類されます。一次性食道閉塞の素因としては、脱水(Dehydration)、疲労(Exhaustion)、沈静剤(Sedatives)の投与直後の摂食などが挙げられ、また、、胃液逆流に伴う食道炎(Reflux esophagitis)、迷走神経障害(Vagal neuropathy)に伴う食道の運動性低下(Esophageal hypomotility)、巨大食道(Megaesophagus)、先天性狭窄(Congenital stenosis)、右大動脈弓遺残(Persistent right aortic arch)、重複食道嚢胞(Esophageal duplication cyst)などに併発する病態も報告されています。慢性経過を示した食道閉塞では、外縦筋層の断裂を起こし、食道憩室(Esophageal diverticulum)を続発する場合もあります。

食道閉塞の症状としては、不安(Anxiety)、流唾(Ptyalism)、水や摂食物の逆流(Water and food regurgitation)、頚部の伸展姿勢(Neck extension posture)、両側性鼻汁(Bilateral nasal discharge)、咳嗽(Coughing)、嚥下痛(Odynophagia)などが見られ、触診では頚静脈溝部(Jugular furrow)に硬化した腫隆が触知される場合もあります。通常、食道閉塞の確定診断(Definitive diagnosis)は内視鏡検査(Endoscopy)で下され、胸部の聴診およびレントゲン検査(Thoracic auscultation/radiography)によって、誤嚥性肺炎(Aspiration pneumonia)の併発を確認します。また、超音波検査(Ultrasonography)によって、閉塞発症域の範囲(Extent of obstruction)、食道壁の厚さ(Esophageal wall thickness)、食道破裂(Esophageal rupture)の有無などを調べる事も重要です。初診時の段階で、詰まった摂食物がすでに押し流されていた場合には、造影レントゲン検査(Contrast radiography)によって、食道運動性低下、食道狭窄、食道憩室などの診断(この場合、内視鏡よりも造影レントゲン検査のほうが有用な症例が多い)を要する場合もあります。

食道閉塞の治療では、胃カテーテルによる食道洗浄(Esophageal lavage)と頚部マッサージで閉塞物の遊離を試みますが、この時には、Xylazine およびAcepromazineの鎮静剤(Sedatives)の投与によって頭部を下げさせ、誤嚥を防ぐことが大切です。また、Atropin投与による食道弛緩(Esophageal relaxation)と唾液分泌の減退(Reduction of salivary secretions)(閉塞物質を乾燥させたり、遠位胃腸運動の減退などのデメリットもある)、Oxytocinの筋肉内投与、Lidocaineの食道内滴下などによって、食道痙攣(Esophageal spasm)を軽減させる方針が有用な場合もあります。この際に、両側の鼻孔から二本のチューブを食道内に到達させて(Dual tubing from both nostril)、洗浄液の移入と放出(Lavage ingress and egress)を同時に行うことで、洗浄液の誤嚥を防ぐ手法が用いられることもあります。また、内視鏡(Endoscopy)の目視下で、生検鉤爪(Biopsy claw)を用いて閉塞物を破綻させる手法も有効です。さらに、初回の治療で閉塞部が遊離できない時には、8~12時間にわたって口籠(Muzzle)を装着させることで、軟化した閉塞物質が自然に嚥下されたり、二度目の治療で容易に遊離できる事もあります。食道閉塞が48時間以上にわたって継続する症例では、補液療法によって流唾による脱水と電解質平衡異常(Acid-base imbalance)の改善を行います。保存性療法(Conservative therapy)に不応性(Reflactory)を示した食道閉塞では、食道切開術(Esophagotomy)による停滞物の外科的除去(Surgical removal)が必要とされることもあります。食道破裂を続発した場合は、周囲組織の広範な感染を伴うため、術部は縫合閉鎖せず、食道切開部から胃カテーテルを留置した後、感染皮下組織の洗浄(Subcutaneous tissue lavage)と抗生物質投与で、二次性創傷治癒(Secondary wound healing)による回復を促します。

食道閉塞の予後は一般に良好ですが(生存率は八割~九割)、閉塞物の除去後の24~48時間においては、食道の再閉塞(Reobstruction)の危険性が高いことが示唆されているため、最低72時間は絶食させ、その後1~3週間はフスマ&ふやかしたペレット等の軟らかい飼料の給餌が行われます。また、閉塞物除去の直後の内視鏡検査で、食道の粘膜損傷(Mucosal injury)、瘢痕形成(Stricture formation)などを確認して、2~4週間後の再検査でその治癒過程をモニタリングすることで、適切な給餌開始時期を見極める事が重要です。誤嚥性肺炎を併発した場合や、閉塞の経過時間(Duration of obstruction)が長かった場合には(もしくは経過時間が不明の場合)、全身性の抗生物質の投与(Systemic administration of antimicrobials)を行い、逆流性食道炎を疑う症例では、粘膜付着剤(Mucosal adherent: Sucralfate, etc)の投与が併用される場合もあります。また、食道狭窄や食道憩室を続発して、間欠性(Intermittent)の食道閉塞を起こす症例では、食道筋切開術(Esophagomyotomy)(=食道狭窄の治療)や、食道粘膜反転術(Esophageal mucosal inversion)(=食道憩室の治療)による患部の外科的整復、および、食道切開術(Esophagotomy)と食道吻合術(Esophageal anastomosis)による、罹患部の食道組織の完全除去が試みられる事もあります。

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