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馬の病気:尿膣症

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尿膣症(Urovagina)について。

膀胱膣逆流(Vesicovaginal reflux)によって、膣内に尿の貯留(Urine accumulation)を生じる疾患で、持続的な生殖器官の汚染を引き起こし、膣炎(Vaginitis)、子宮頚管炎(Cervicitis)、子宮内膜炎(Endometritis)などに起因する妊娠機能の減退を生じるため、繁殖牝馬にとって臨床上極めて深刻な病態であると言えます。

尿膣症の病因としては、多胎雌馬(Multiparous mare)における尿生殖管支持靭帯の弛緩(Stretching of the support ligaments of urogenital tract)によって、頭側膣部が腹側に傾斜すること(Ventral sloping of cranial vagina)が挙げられています。また、気膣症(Pneumovagina)の治療のために施された陰門形成術(Vulvoplasty:いわゆるCaslick procedure)によって、背側外陰の過剰閉鎖(Excessive closure of dorsal vulva)を起こした場合に、排尿時の後方への尿飛沫(Urine back-splash during urination)を生じて、尿膣症に至ることも示唆されています。また、会陰裂傷(Perineal laceration)による膣前庭組織の欠損から、尿膣症を続発する病態も知られています。子馬の雌馬において尿膣症が認められた場合には、極めて稀に見られる病態である異所性尿管(Ectopic ureter)を除外診断する必要があります。

尿膣症の罹患馬では、循環エストロジェン濃度(Circulating estrogen concentration)が高い期間にのみ尿貯留を呈する症例もあるため、発情期間中(During estrus)における膣鏡検査(Speculum examination)によって尿膣症の診断が下すことが重要です。この際には、子宮の細菌感染(Uterine bacterial infection)に起因する膣内への浸出液貯留(Exudate accumulation)においても同様の所見を示すため、貯留液検体を用いて、細菌数(=子宮感染で増加)、白血球数(=子宮感染で増加)、炭酸カルシウム結晶(=尿膣症で増加)、クレアチニン濃度(=尿膣症では血清クレアチニン濃度の2~3倍まで増加)などを検査することで、尿膣症と子宮感染症の鑑別診断が行われます。

尿膣症の治療では、給餌管理による体重増加と体格向上によって、頭側膣部の傾斜が改善する場合もありますが、殆どの症例において尿貯留症状の根治のためには、外科的な尿道開口部の修正(Modification of external urethral orifice)を要することが知られています。手技的に最も簡易な術式としては、尿道横襞の尾側変位術(Caudal relocation of transverse urethral fold)(いわゆるモニン式尿道形成術:Monin urethroplasty)が挙げられ、尿道横襞の側方に水平切開創(Horizontal incision)を設け、横襞組織を尾側へと牽引しながら膣前庭床部(Vestibular floor)へと縫合結合することで、尿道の開口部を尾側へと移動させます。この手法は簡易、短時間、外科侵襲を最小限に施術できますが、充分な治療効果が期待できるのは、軽度の病態を示す症例のみである事が報告されています。

一般的な尿膣症の外科的治療では、ブラウン式、シャイアーズ式、マッキノン式などの様々な術式による尿道伸展術(Urethral extension)を行って、膣内への尿逆流を予防する処置が施されます。ブラウン式尿道伸展術では、尿道横襞から膣前庭床部に掛けて水平切開創を設け、左右の腹側辺縁同士(Opposed ventral edges)を向かい合わせるように縫合結合させて尿道伸展部を形成した後、左右の背側辺縁同士(Opposed dorsal edges)を向かい合わせるように縫合結合させて膣前庭伸展部を形成させます。シャイアーズ式尿道伸展術では、左右の腹側膣前庭粘膜(Ventral vestibular mucosa)を膣前庭の中央部へと引き合わせて直接的に縫合した後、外反させた粘膜稜の背側端を切除し、露出した粘膜下組織同士を縫合結合して、左右の膣前庭粘膜同士の癒合を促すことで、尿道の尾側方向への伸展が施されます。

マッキノン式尿道伸展術では、尿道開口部から頭側へ2cmの位置から開始した切開創を、膣前庭壁を二分するように左右へと伸展させてフラップを作り出し、左右のフラップ同士を膣前庭の中央部へと引き合わせて、Y字を成すようにフラップ端を外反させながら縫合結合し、尿道伸展部を形成します。また、マッキノン式とブラウン式を併用した術式では、尿道横襞から左右の膣前庭壁へと伸展させた切開創によってフラップを作り出し、腹側フラップ同士を膣前庭の中央部へと引き合わせて、Y字を成すようにフラップ端を外反させながら縫合結合して尿道伸展部を形成した後、背側フラップ同士を膣前庭の中央部へと引き合わせて、同様にY字を成すようにフラップ端を外反させながら縫合結合して、膣前庭伸展部を形成します。

マッキノン式およびマッキノン式とブラウン式を併用した尿道伸展術では、ブラウン式およびシャイアーズ式尿道伸展術と比較して、より堅固で長い尿道伸展を施すことが可能ですが、Y字縫合部分の真ん中から尿漏出を起こし易いことが示されているため、フラップ端を充分に外反させながら縫合する事と、フラップ同士を膣前庭の中央部で結合させて緊張度を左右対称にする事が重要です。

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