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馬の病気:子宮捻転

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子宮捻転(Uterine torsion)について。

馬における子宮の捻転は、産科疾患(Obstetric disorders)の5~10%を占め、過剰な胎児の動き(Vigorous fetal movement)や正向反射(Fetal righting reflux)が病因として挙げられています。

子宮捻転の症状としては、急性発現性(Acute onset)の軽度~中程度疝痛(Mild to moderate colic)、発汗(Sweating)、食欲不振(Anorexia)、膁部を顧みる仕草(Frank looking)、頻繁な排尿姿勢(Frequent urinating posture)、木挽台姿勢(Sawhorse standing)などが認められます。また、症状発現の数日前から膁部腹壁における顕著な胎児の動揺が見られた、という稟告が示される場合もあります。

子宮捻転の診断では、直腸検査(Rectal examination)において左右の子宮広靭帯(Uterine broad ligament)の走行と硬結度を触診することが重要です。この際には、回転方向に当たる側の靭帯(=馬体に対して左捻転の症例では左側子宮広靭帯)が垂直方向(Vertical direction)に走行して、正常よりも硬く尾側に位置している所見が触知され、回転方向の反対側に当たる靭帯は、子宮上部を水平方向(Horizontal direction)に対側へと走行している所見が認められます。

直腸壁を介しての超音波検査(Transrectal ultrasonography)では、胎盤剥離(Placental detachment)、子宮壁肥厚化(Uterine wall thickening)、脈管怒張(Distended vasculature)などを確認し、腹壁を介しての超音波検査(Transabdominal ultrasonography)では、心拍数とそのリズムから胎児の生存性(Fetal viability)の評価が行われます。腹水検査(Abdominocentesis)による白血球数増加と蛋白濃度上昇は子宮損傷の指標として有効で、また、腹腔鏡検査(Laparoscopy)によってより正確に子宮組織の生存性を確かめる手法も報告されています。

子宮捻転の保存性療法(Conservative therapy)としては、子宮頚管(Cervix)が充分に拡張している症例では、術者が腕を子宮体部まで伸展させて胎児を頭尾側方向に揺することで、捻転の整復が可能な場合もあります。子宮頚管が閉じている症例では、全身麻酔下(Under general anesthesia)でのローリング法が試みられ、子宮の回転方向に当たる馬体のサイドを下側とした横臥位(Lateral recumbency)(=馬体に対して左捻転の症例では左側横臥位)において、肌広い木板で膁部を押さえながら子宮の回転方向にむかって馬体を回転させて(=馬体に対して左捻転の症例では、左側横臥位→背臥位→右側横臥位の順)、その後の直腸検査によって捻転の整復度合いを確認します。しかし、ローリング法は、捻転方向の誤診があった場合には病態を悪化させる結果につながりますし、全身麻酔に起因する低酸素症(Hypoxia)から胎児の生存性に危険が生じる可能性もあり、更には、胎盤剥離、子宮破裂(Uterine rupture)、大結腸変位(Large colon displacement)などの医原性合併症(Iatrogenic complication)を起こす場合もあるため、その実施には賛否両論があります。

子宮捻転の外科的治療では、捻転方向の確定診断が可能で、子宮漿膜面の目視によって子宮破裂を確実に発見したり、子宮の虚血性壊死(Ischemic necrosis)の重篤度を評価できるという利点があります。起立位における膁部開腹術(Standing flank laparotomy)では、術者が子宮の腹側へと腕を通して子宮全体を持ち上げながら揺さぶることで、捻転の整復が試みられます。この際には、馬体の反対側における膁部開腹術を介して、二人目の術者が子宮背側部を揺すりながら引っ張ることで、正常位置への整復が容易となる場合もあります。起立位手術に難治性を示した症例では、全身麻酔下での正中開腹術(Midline celiotomy)による捻転整復が行われます。起立位での膁部開腹術では、全身麻酔による母体および胎児への負担を回避できますが、設備が整っている状況であれば、出来る限りにおいて全身麻酔下での正中開腹術を選択するべきであることが提唱されています。

子宮捻転の整復後に子宮の重度壊死が確認された場合には、救済療法(Salvage therapy)として卵巣子宮摘出術(Ovariohysterectomy)を行い、非繁殖用馬としての飼養が選択される事もあります。子宮捻転の整復後に胎児の死亡が確認された症例では、まず自然流産(Natural abortion)による胎児排出を促して、子宮切開術(Hysterotomy)を避ける方針が取られますが、子宮内の胎児姿勢や母体の健康状態を慎重にモニタリングして、正中開腹術による子宮切開の必要性とそのタイミングを見極めることが重要です。

子宮捻転の整復後に胎児が生存していて、子宮の壊死も起きていないことが確認された場合には、プロジェスティン補給療法(Progestin supplementation)によって、子宮筋静止(Myometrial quiescence)の促進と胎盤剥離の予防が行われます。一般的に、子宮の虚血性損傷が軽度で、速やかに整復が施された子宮捻転においては、その後の良好な妊娠経過と順調な分娩が起きることが示されています。しかし、術後の数週間で胎児が死亡した場合にも、プロジェスティン補給によってミイラ化した胎児が子宮内に停滞してしまう可能性があるため、経時的な超音波検査によって胎児の生存性を慎重にモニタリングすることが重要です。

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