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馬の病気:多尿多飲

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多尿多飲(Polyuria and polydipsia)について。

多尿症は排尿量(Urine output)が50mL/kg/dayを超える状態を指し、多飲症は飲水量(Water intake)が100mL/kg/dayを超える状態を指します。これは体重500kgの成馬では、排尿量が25リットル、飲水量が50リットルに相当しますが、正常値は年齢、給餌内容、使役運動量(Workload)、飼養環境温度(Environmental temperature)、消化器からの水分吸収量(Gastrointestinal water absorption)によって、かなり差異があることを考慮する必要があります。馬における多尿多飲の原因としては、慢性腎不全(Chronic renal failure)、クッシング病(Cushing’s disease)、心因性多飲症(Psychogenic polydipsia)、尿崩症(Diabetes insipidus)、医原性多尿症(Iatrogenic polyuria)などが挙げられています。また、排尿回数の増加(頻尿症:Pollakiuria)を呈した症例においても、多尿症という稟告が示される場合もあるため、病因の鑑別診断のまえに、24時間にわたる飲水量と排尿量をできるだけ正確に測定することが重要です。

クッシング病は、下垂体中葉機能異常(Pituitary pars intermedia dysfunction)からACTH過剰分泌を引き起こす疾患で、多毛症(Hirsutism)や蹄葉炎(Laminitis)などの症状に併行して、多尿多飲を呈する症例もあります。クッシング病から多尿多飲を続発する病因としては、浸透圧性の利尿(Osmotic dieresis)、コルチゾルによるADH活性抑制(Antidiuretic hormone antagonism)、肥大した下垂体による視床下部核(Hypothalamic nuclei:ADHの生成および貯蔵部位)への衝突(Impingement)などが挙げられています。クッシング病の診断は、デキサメサゾン抑制試験(Dexamethasone suppression test)、TRH刺激試験(Thyrotropin-releasing hormone stimulation test)、ACTHおよびコルチゾルの血中濃度測定、頭部CTスキャンなどによって行われ、ドーパミン作動薬(Dopamine agonist: Pergolide, etc)、抗セロトニン作動薬(Antiserotoninergic agents: Cyproheptadine, etc)、3-beta-HSD競合性抑制薬(3-beta hydroxysteroid dehydrogenase competitive inhibitor: Trilostane, etc)等の投与による治療が試みられます。

心因性多飲症は、馬房での退屈さ(Boredom)または飼養環境の変化(Environmental changes)などに起因すると考えられ、通常は極めて大量の多飲症状を呈します。心因性多飲症の診断に際しては、まず腎不全とクッシング病を除外診断した後、水分剥脱試験(Water deprivation test)による尿崩症の除外診断を行います。心因性多飲症の馬においては、5%の体重減少が起こす程度の水分剥脱によって(通常12~24時間)、尿比重(Urine specific gravity)の上昇(>1.025)が見られます。しかし、長期間にわたる多飲症を起こしていた症例では、集合尿細管(Collecting tubule)および髄質間質(Medullary interstitium)のあいだの浸透圧勾配(Osmotic gradient)が異常を呈しており(いわゆる髄質洗い流し状態:Medullary washout)、ADHによる尿濃縮が起きにくい場合もあるため、念のために水分制限試験(Water restriction test: 40mL/kg/day)を3~4日間にわたって実施して、尿比重の上昇(>1.025)が起きることを確認することで、尿崩症(もしくは初期病態の慢性腎不全)を除外診断します。心因性多飲症の推定診断が下された症例においては、飲水量を運動量や気温などに相応した必要摂取量まで制限することが適当とされ、また、馬房での退屈さを改善するため、運動や放牧の時間を増やす、複数馬を同一馬房で飼養する、馬房玩具(Stall toy)を設置する、一日当たりの給餌回数の増加する、などの手法が試みられる場合もあります。さらに、退屈しのぎのため塩ブロックを過剰に舐めて、二次的に多飲症を引き起こす場合もあるため、馬房からの塩ブロックの除去を試すこともあります。

尿崩症は、ADH分泌異常(Inadequate ADH secretion)に起因する神経原性尿崩症(Neurogenic diabetes insipidus)と、集合尿細管の上皮細胞(Epithelial cells)におけるADH感度減少(Decreased sensitivity to ADH)に起因する腎原性尿崩症(Nephrogenic diabetes insipidus)の二つに分類されます。尿崩症の症例では上記のように、水分剥脱試験によっても等張尿(Isothenuric urine: Urine specific gravity 1.008 to 1.014)を排出する所見によって診断が下されますが、12時間前後で急激な脱水症状(Rapid dehydration: 10~15%)を起こす場合もあるため、慎重な水和状態(Hydration status)のモニタリングが必要です。水分剥脱試験に陽性を示した症例においては、血中ADH濃度の測定(神経原性尿崩症では低濃度)、もしくは合成ADHの投与(神経原性尿崩症では尿濃縮が起こる)などによって、神経原性尿崩症と腎原性尿崩症の鑑別診断が試みられる場合もあります。治療に際しては、神経原性尿崩症の羅患馬に対しては、ADH類似体(ADH analog: Desmopression, etc)の投与によるホルモン置換療法(Hormone replacement therapy)が行われ、また、腎原性尿崩症の羅患馬に対しては、塩分および水分摂取量制限(Salt and water intake restriction)、サイアザイド系利尿薬(Thiazide diuretics)の投与、プロスタグランディン抑制薬(Prostaglandin inhibitors)の投与などが行われます。

医原性多尿症は、コルチコステロイド療法や鎮静剤使用(Sedative administration: Xylazine, Detomidine, etc)などによって起こることが知られています。多くの症例では、軽度の一過性多尿(Transient polyuria)を呈し、多飲症はあまり観察されないため、薬剤投与の病歴がある馬においては、投薬中止によって症状改善を確認することが大切です。

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