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馬の病気:急性腎不全

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急性腎不全(Acute renal failure)について。

急性腎不全は、糸球体濾過速度の急激な減少(Abrupt reduction in glomerular filtration rate)を起こす病態です。馬においては主に、腎毒性物への暴露(Nephrotoxin exposure)、または、血管運動性腎障害(Vasomotor nephropathy)に起因して発症し、多くの症例において急性尿細管壊死(Acute tubular necrosis)を病理的所見とします。

馬の臨床における最も重要な腎毒性物は、アミノグリコサイド系抗生物質(Aminoglycoside antibiotics)で、Neomycinが最も毒性が高く、Gentamicin、Kanamycin、Amikacinの三つが同程度で続き、Streptomycinが比較的に低毒性であることが知られています。アミノグリコサイド系抗生物質は、近位尿細管上皮細胞(Proximal tubular epithelial cells)に蓄積(Accumulation)することによって生じるため、高濃度の一回投与よりも、数日間にわたって投与された場合に毒性を示し、下痢(Diarrhea)や敗血症(Septicemia)などの脱水症状(Dehydration)を起こした患馬において、特に腎毒性発現の危険の高いことが報告されています。一方、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の腎毒性では、腎髄稜壊死(Medullary crest necrosis)に続発する肉眼的血尿症(Gross hematuria)を起こしますが、顕著な臨床症状(Overt clinical signs)を呈する症例はあまり多くありません。また、重篤かつ遷延性の横紋筋融解症(Severe and prolonged rhabdomyolysis)の羅患馬における色素性腎障害(Pigment nephropathy)、ビタミンD中毒(Vitamin D intoxication)、水銀やカドミウムなどの重金属中毒(Heavy metal intoxication)、脱水状態におけるOxytetracyclineやPolymyxin Bなどの投与も、急性腎不全の病因として挙げられています。

血管運動性腎障害は、出血性ショック(Hemorrhagic shock)、重度の腸炎(Severe enterocolitis)に続発する血液量減少症(Hypovolemia)、敗血症性ショック(Septic shock)などの持続性低血圧(Sustained hypotension)を生ずる病態に起因して発症し、急性尿細管壊死と共に広汎性髄質壊死(Diffuse medullary necrosis)を引き起こします。稀な病因としては、出血性紫斑病(Purpura hemorrhagica)などの免疫介在性疾患(Immune-mediated disorders)に起因する急性糸球体症(Acute glomerulopathy)や、ベータラクタム系抗生物質などの薬物副作用(Adverse drug effects)に起因する急性間質性腎炎(Acute interstitial nephritis)、尿路結石症(Urolithiasis)に起因する腎後性腎不全(Postrenal acute renal failure)の発症例も報告されています。

急性腎不全の罹患馬では、あまり特異的臨床症状は示しませんが、脱水などの原発疾患(Primary disease)の症状に加えて、重篤な抑鬱(Depression)や食欲不振(Anorexia)が見られた場合や、補液療法(Fluid therapy)の開始後6~12時間経っても排尿が見られない場合などには、急性腎不全を疑う必要があります。直腸検査(Rectal examination)では、腎臓の肥大や圧痛(Enlarged and painful kidney)が触診される場合もあります。腎臓の超音波検査(Renal ultrasonography)では、腎臓肥大化(Renal enlargement)、腎周囲浮腫(Perirenal edema)、皮髄質境界の不明瞭化(Loss of corticomedullary junction)、腎皮質の肥厚化(Renal cortex widening)、腎盤膨満(Renal pelves dilation)などが確認されることもあります。また、腎毒性物暴露の病歴がなく、正確な病態解明が必要と判断された場合には、腎生検(Renal biopsy)による病理学的検査(Pathologic examination)が実施される事もあります。

急性腎不全の診断では、血液検査において、クレアチニン値の上昇(5~15mg/dL)に伴う、BUNとクレアチニン比の減少(BUN/Creatinine ratio <10:1)、低ナトリウム血症(Hyponatremia)、低クロール血症(Hypochloremia)、低カルシウム血症(Hypocalcemia)などを呈し、病状の悪化に伴って、高カリウム血症(Hyperkalemia)、高リン血症(Hyperphosphatemia)、代謝性酸血症(Metabolic acidosis)などが見られる場合もあります。尿検査では、尿比重低下(Low urine specific gravity: <1.020)や、肉眼的または顕微鏡的血尿症(Gross/Microscopic hematuria)を呈し、近位尿細管損傷(Proximal tubular damage)を起こした場合には糖尿(Glucosuria)を、糸球体損傷(Glomerular damage)を起こした場合には蛋白尿(Proteinuria: Urine protein/creatinine ratio >2:1)が見られる場合もあります。また、ナトリウムとリンの分画浄化率の上昇(Increased fractional clearances of sodium and phosphorus)が認められる症例もありますが、正確な診断のためには補液療法の開始前の検体を使用する事が推奨されています。

急性腎不全の治療では、補液療法による血流量置換(Volume deficit replacement)と、電解質および酸塩基平衡の改善(Electrolyte and acid-base balance correction)を最優先とし、排尿量(Urine output)、高窒素血症(Azotemia)、電解質濃度、体重などを毎日モニタリングすることが重要です。乏尿(Oliguria)を呈する症例では、補液開始後12~24時間での排尿が見られず、結膜または腹部浮腫(Conjunctiva/Ventral edema)を呈し、一般的に、多尿(Polyuria)を呈する症例よりも予後が悪いことが知られています。食欲不振が持続する症例では、補液へのブドウ糖添加や経鼻カテーテルによる給餌が行われます。腎前性の高窒素血症(Prerenal azotemia)を起こしていた症例では、補液開始後24時間以内にクレアチニン値の減少(30~50%以上)が認められる所見で、鑑別診断が可能な場合もあります。血管運動性腎障害に起因する急性腎不全において、低血圧が持続(Systolic blood pressure <80mmHg)している症例においては、高張性生理食塩水(Hypertonic saline)やDobutamineの投与を要する場合もあります。乏尿が24時間持続する重篤な腎不全症例に対しては、Furosemideの投与が行われ、これに不応性の場合には、MannitolとDopamineの投与が行われる事もあります。乏尿が72時間に達する場合には予後不良を呈する症例が多いため、血液透析療法(Hemodialysis therapy)、腹膜透析療法(Peritoneal dialysis therapy)、胸膜透析療法(Pleural dialysis therapy)などが応用された症例報告もあります。

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