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馬の病気:心房細動

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心房細動(Atrial fibrillation)について。

不調和な心房電位活動(Uncoordinated atrial electrical activity)に起因して心不整脈(Cardiac arrhythmia)を起こす疾患です。馬において心房細動の発症率が高い要因としては、心房の物理的大きさ、安静時の迷走神経緊張の高さ(High resting vagal tone)、活動電位持続時間の短縮(Shortened action potential duration)、などが関与していると考えられています。また、心筋疾患による心房拡大(Atrial enlargement from myocardial disease)、房室弁逆流(Atrioventricular valvular regurgitation)、心内膜炎(Endocarditis)、自律神経系の不均衡(Autonomic nervous system imbalance)、電解質または酸塩基の撹乱(Electrolyte/Acid-base disturbances)、麻酔薬または鎮静薬の投与(Anesthetic/Tranquilizer administration)、などが発症素因となることが知られています。

心房細動の羅患馬は、安静時には不症候性(Asymptomatic)の場合もありますが、運動時にはプアパフォーマンスや運動不耐性(Exercise intolerance)を呈し、呼吸器疾患(Respiratory disease)、運動誘発性の鼻出血(Exercise-induced epistaxis)、虚弱(Weakness)、疝痛(Colic)、慢性心不全(Chronic heart failure)などが見られる事もあります。心房細動発症馬における心拍数は、健常馬が同強度の運動時に示すものよりも40~60回(毎分)多くなり、240回(毎分)を上回る場合もあります。約半数の羅患馬で心雑音(Cardiac murmur)が聴取され、二次性心房拡大を生じた症例では、末梢浮腫(Peripheral edema)や頚静脈怒張(Jugular venous distention)が観察される場合もあります。

心房細動の診断では、心電図検査(Electrocardiography)において、不規則なR-R間隔(Irregular R-R interval)、P波の消失(Absent P-waves)、細かい波状基線(=f波)の発現(Fibrillation, f-waves)、QT間隔とT波形状の僅かな変異性(Slightly variable QT-interval and T-waves)などが確認されます。心エコー検査(Echocardiography)では、多くの羅患馬で正常範囲内であり、“孤立性”心房細動(Lone atrial fibrillation)に分類されます。しかし、心筋異常を併発した症例においては、左心房拡大(Left atrial enlargement)や左心室内径短縮率(Left ventricular shortening fraction)の軽度な低下(24~32%)が観察される事もあります。左心房拡大の指標としては、左心房大動脈根比率(Left atrium-aortic root ratio)よりも、最大心房寸法(Maximal left atrial dimension)の測定(健常馬では13.5cm以下)のほうが有用である事が提唱されています。

心房細動の治療としては、陰性変力薬(Negative inotropic agent)であるQuinidineが最も一般的に用いられますが、投与前には血液検査によって水和(Hydration)、電解質濃度(Electrolyte concentration)、酸塩基平衡(Acid-base balance)が正常である事を確認することが重要です。発症から二週間以内の心房細動の治療には、Quinidine gluconateの経静脈投与が実施される事もありますが、経過が長い症例(もしくは経過が不明な症例)においては、Quinidine sulfateの経口投与が実施されることが一般的です。初回投与の二時間後に、心電図による心房細動から洞調律(Sinus rhythm)への転換(Conversion)を確認し、副作用の発現を診断します。Quinidine投与に続発する副作用としては、鼻腔浮腫(Nasal edema)、蕁麻疹(Urticaria)、蹄葉炎(Laminitis)、疝痛(Colic)、下痢(Diarrhea)、運動失調(Ataxia)などが報告されています。初回投与で洞調律への転換が起こらなかった場合には、二時間おきに四回の投与を実施し、その後は六時間おきの投与を実施する投薬指針が示されていますが、心電図上のQRS郡幅が治療前よりも25%以上増加した場合には治療を停止することが推奨されています。治療開始から24~48時間で洞調律への転換が起こらなかった場合や、左心室内径短縮率が異常低下した場合(<24%)には、陽性変力薬(Positive inotropic agent)であるDigoxin投与によって心拍出量の改善が試みられる場合もありますが、連続二日以上にわたるQuinidineとDigoxinの併用は推奨されていません(Digoxinの血中濃度モニタリングを実施した場合を除いて)。 Quinidine療法による心房細動から洞調律への転換に際しては、f波の頻度の低下および粗雑化(Less frequent and coarser f-waves)とR-R間隔の均等化(Become regular R-R intervals)が起こり、ひとつのQRS郡に対して複数のP波が観察される場合もあります。洞調律への転換が示された場合には、24時間の継続的な心電図検査によって、心房細動の再発や、頻繁な心房早発性脱分極(Frequent atrial premature depolarizations)が起きていない事を確認します。心電図が24時間以上にわたって正常な症例では、調教や乗用に回帰することが可能ですが、心房早発性脱分極が発見された場合はコルチコステロイド療法の実施が推奨されます。

心エコー検査上の異常を示さない孤立性心房細動では、洞調律への転換後も一般に予後良好で、発症前と同レベルの競走および競技を継続できることが報告されています。心房拡張や房室弁逆流を併発した症例では、心房細動の再発(Recurrence)を起こす事が多いことが示唆されています。また、Quinidine治療前に、四ヶ月以上の経過を示していた心房細動では、再発の危険が有意に高いことが報告されています。安静時の心拍数が毎分60回以上であったり、慢性心不全の症状を呈した重篤な心房細動の症例では、予後が極めて悪いため(Guarded to grave prognosis)、Quinidine投与による洞調律への転換は行われない場合が殆どです。

心房細動の病態のうち、フロセマイド投与とカリウム枯渇(Potassium depletion)に続発することの多い発作性心房細動(Paroxysmal atrial fibrillation)は、24~48時間で自発的に洞調律へと回復することが一般的です。この場合には、心房細動の再発を予防するためフロセマイド治療の中止と、カリウムの補助給与(Potassium supplementation)が行われます。

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