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馬の病気:心室性頻脈症

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心室性頻脈症(Ventricular tachycardia)について。

ヒス束分岐部以下の心室内から発生する興奮によって、不整脈(Cardiac arrhythmia)を起こす疾患です。病因論としては、早発性心室脱分極(Premature ventricular depolarization)による自発性惹起(Spontaneous initiation)、交感神経刺激(Sympathetic stimulation)に起因する後脱分極振幅の上昇(Increased after-depolarization amplitude)、伝導刺激の心室興奮旋回(Ventricular reentry)などが挙げられています。心室性頻脈を起こしうる素因疾病としては、心筋炎(Myocarditis)、心筋壊死(Myocardial necrosis)、細菌性心内膜炎(Bacterial endocarditis)、自律神経器不均衡(Autonomic nervous system imbalance)、低酸素症(Hypoxia)、電解質撹乱(Electrolyte disturbance)、内毒素血症(Endotoxemia)を起こす消化器疾患(Gastrointestinal disease)、大動脈根破裂(Aortic root rupture)等が知られています。心室性頻脈に続発して起こる事の多い心室細動(Ventricular fibrillation)は、馬の突然死(Sudden death)の重要な原因の一つであると考えられています。

頻脈が軽度で均一性リズム(Uniform rhythm)の症例では、安静時には不症候性(Asymptomatic)で、使役時には運動不耐性(Exercise intolerance)を示しますが、重篤な頻脈と多形性リズム(Multiform rhythm)を起こす持続性心室性頻脈(Sustained ventricular tachycardia)の症例では、重度慢性心不全(Severe chronic heart failure)、抑鬱(Depression)、虚弱(Weakness)、疝痛(Colic)、呼吸困難(Respiratory distress)、咳嗽(Coughing)、腹部浮腫(Ventral edema)、肺水腫(Pulmonary edema)などを起こす場合もあります。一般的に、均一性心室性頻脈(Uniform ventricular tachycardia)では右側慢性心不全(Right-sided chronic heart failure)を示す症状(腹部浮腫、頚静脈怒張)が顕著に見られ、多形性心室性頻脈(Multiform ventricular tachycardia)では左側慢性心不全(Left-sided chronic heart failure)を示す症状(発咳、呼吸困難、泡沫喀出)を多く呈します。

心室性頻脈症の診断では、初期病態の心電図検査(Electrocardiography)において、心室期外収縮(Ventricular premature complexes)が確認され、先行P波の欠如、幅広く変形したQRS郡(Widened and bizarre QRS complexes)、不規則なR-R間隔(Irregular R-R intervals)などの所見を呈します。この心室期外収縮が四回以上連続で生じている所見で心室性頻脈症の診断が下され、QRS郡はT波とは逆向きに示される場合が多く、多形性心室性頻脈では各QRS郡の形態が不均一になります(均一性心室性頻脈ではほぼ一定)。また多くの症例において、心房拍が心室拍よりも減速する房室解離(Atrioventricular dissociation)が起こり、重度の病態では、結合拍動(Fusion beats)または癒合拍動(Capture beats)が見られる事もあります。心エコー検査では、原発病因となる心筋疾患の診断が行われ、心筋運動異常(Myocardial dyskinesis)、心筋運動低下(Myocardial hypokinesis)、心筋の異常エコー輝度(Abnormal myocardial echogenicity)等の所見を呈します。また、心カテーテル挿入(Cardiac catheterization)によって、心拍出量の減少(Decreased stroke volume)、平均左心房圧の上昇(Increased mean left atrial pressure)、収縮期右心室圧の上昇(Increased right ventricular systolic pressure)などを判定する手法も試みられています。

心室性頻脈症の治療は、病因と病態の重篤度によって異なり、頻脈が比較的軽度な症例では、コルチコステロイド療法に加えて、根底病態である電解質異常や内毒素血症を改善することで、根治と良好な予後が期待できる場合が殆どです。しかし、心拍数が毎分120回以上を示す均一性心室性頻脈においては、短期間で慢性心不全を続発する可能性が高いため、抗不整脈薬(Anti-arrhythmia drugs)による治療が必要です。馬における抗不整脈薬としては、LidocaineおよびQuinidineが最も頻繁に用いられますが、MgSO4、Procainamide、Propafenone、Propranolol等の使用も報告されています。また、心電図検査において、重度の頻脈(>120 beats/min)と多形性心室性頻脈の所見に加えて、多源性の心室期外収縮(Multifocal origin for the ventricular premature complexes)、トルサード・ド・ポワンツ(Torsades de pointes:心室波が、漸増→漸減→点状、を繰り返す病態)、R波と先行T波の重なり(Superimposed R wave on the preceding T wave:いわゆる“R on T”)、などが確認された場合には、心室細動から突然死を引き起こす危険が高いため、循環器救急疾患(Cardiovascular emergency)として、速やかに抗不整脈薬の投与を実施することが重要です。

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