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馬の病気:心外膜炎

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心外膜炎(Pericarditis)について。

臓側心膜(Visceral pericardium)と壁側心膜(Parietal pericardium)のあいだに浸出物貯留(Exudate accumulation)を生じる疾患で、血行性細菌感染(Hematogenous bacterial infection)、肺および胸膜感染の波及(Extension from lung/pelural infection)、穿孔性外傷(Penetrating trauma)、腫瘍(Neoplasia)などが病因として挙げられています。病態は、心外膜浸出液(Pericardial effusion)の増大に伴う心臓の膨満機能の低下(Decreased distensibility)と後期拡張期心室圧の上昇(Increased ventricular end-diastolic pressure)に始まり、心室収縮機能の減退(Depression of ventricular contractility)から心拍出量の減少(Decreased cardiac output)へと進行します。心外膜炎はその病態に応じて、心外膜液の増圧に起因する浸出性心外膜(Effusive pericarditis)と、心膜(Pericardium)と心外膜(Epicardium)の繊維素性変化(Fibrinous changes)および癒着(Adhesion)に起因する収縮性心外膜炎(Constrictive pericarditis)に分類されます。

心外膜炎は一般的に、非特異的な臨床症状(Nonspecific clinical signs)を呈し、発熱(Fever)、食欲不振(Anorexia)、抑鬱(Depression)、体重減少(Weight loss)などが見られ、病態の進行に伴って、末梢浮腫(Peripheral edema)、頚静脈怒張(Jugular vein distension)、頻呼吸(Tachypnea)を起こす場合もあります。聴診では、頻脈(Tachycardia)、心音の不明瞭化(“押し殺されたような音”)(Muffling heart sounds)、腹側領域での肺音消失(Absence of lung sounds in the ventral thorax)などが確認されます。類似疾患である胸膜炎(Pleuritis)は、肺音の不明瞭化(Muffling lung sounds)が聴取されますが、心音の不明瞭化は確認されず、また心音の聴取域が拡散(Radiation of heart sounds)するなどの所見によって除外診断を下します。

心外膜炎における心電図検査(Electrocardiography)では、心室脱分極相であるQRS群の振幅減少(Decreased amplitude of QRS complexes: <1.5mV from base-apex lead)やST区域の挙上(ST-segment elevation)などが示され、心筋炎(Myocarditis)を併発した症例では心不整脈(Cardiac arrhythmias)を呈する場合もあります。胸部X線検査では心臓シルエットの拡大、血液検査では炎症性変化が見られますが、いずれも心外膜炎に特異的所見ではありません。心エコー検査(Echocardiography)では、臓側心膜と壁側心膜のあいだに無エコー域が観察され、低エコー性の繊維素生成(Fibrin production)や点状高エコー性のガス生成(=嫌気性菌感染)が見られる事もあります。心外膜浸出液は心室壁(Ventricular wall)の周囲には起きますが、左心房壁(Left atrium wall)の周囲には観察されないため、この所見から胸水貯留(Pleural effusion)との鑑別を行います。右心室の拡張期圧潰(Diastolic collapse of right ventricle)または右心房の収縮期圧潰(Systolic collapse of right atrium)を生じた病態では、心タンポナーデ(Cardiac tamponade)が続発して、血行動態的に有意(Hemodynamically significant)な心外膜浸出液貯留が起きている事が示唆され、速やかな浸出液排出が必要です。浸出液の貯留が顕著ではない慢性の収縮性心外膜炎では、心エコー検査での診断が困難な症例もありますが、慎重な検査によって、心膜肥厚(Thickened pericardium)、心房拡張(Atrial dilation)、心室中隔の過剰増殖性動揺(Exuberant movement of the ventricular septum)などが見られ、カラードップラー検査では、吸気時心充満の悪化(Exaggerated inspiratory heart filling)が確認できることもあります。

心外膜炎の治療としては、左胸郭の第五肋間(Left fifth interconstal space)からの超音波誘導(Ultrasound-guided)によって、心外膜浸出液排出(Pericardiocentesis)が行われ、多量の浸出液貯留が見られる症例では、右胸郭の同部位からも併行して排液が施されます。可能な限り、排液用の留置管(Indwelling chest tube)を設置して、継続的に心外膜浸出液の除去と抗生物質の注入(Antibiotics infusion)を行うことが推奨されています。排液によって循環器症状が改善する所見によって、浸出性心外膜と収縮性心外膜炎の鑑別が可能な場合もあります(後者は改善しない)。採取された貯留液では、蛋白濃度の上昇(>3.5g/dL)や白血球数の増加(>2500/uL)が見られ、細菌培養(Bacterial culture)と抗生物質の感受性試験(Antimicrobial susceptibility test)が実施されます。感受性試験の結果に基づいて、全身性抗生物質療法(Systemic antimicrobial therapy)と非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与が行われ、細菌培養が陰性の非感染性心外膜炎においては、コルチコステロイドが併用される場合もあります。また、重篤な収縮性心外膜炎の症例においては、心外膜切除術(Pericardiectomy)による病巣清掃を要する症例もありますが、長時間かつ危険な術式であるため、慎重に循環器および呼吸器機能の機能を評価して、施術の是非を判断する必要があります。

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