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馬場馬術でのロルクアー問題

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馬場馬術の世界で論議が起こっているロルクアー問題について。

“ロルクアー”(Rollkur)とは、馬場馬術(Dressage riding)において頚部の過剰屈曲(Neck hyperflexion)によって、比較的に強度の収縮運動を実施するトレーニング法を指します。この調教テクニックに関しては、数年前から馬への負担が大きく動物虐待に相当するのではないか?という論議(Controversy)がありました。そして、昨年十月にヨーロッパで開催されたある競技会で、某国のオリンピック代表選手がロルクアーを含む二時間以上の準備運動を行い、騎乗馬の舌が青く虚血している模様がネットで流れるという事件もありました。

このように論議が活発化していった結果、FEI国際馬術連盟はロルクアー問題を協議する作業部会(Working group)を発足させ、ロルクアーの規定を含む新たなスチュワード指針(Steward guideline)を発表しました。もちろん、これまでのスチュワード指針の中でも、アグレッシブな騎乗法(Aggressive riding)は許容できない、という方針は述べられていましたが、今回の作業部会では、競技前後の運動中の頚部の位置およびストレッチに関する新たな項目(New annex of head position/stretching in pre/post-competition training techniques)が追加されました。

この新たな項目の要点としては、以下のような事項が含まれています。

(1)故意に馬の頚部を上下左右に過剰屈曲させる運動は、極めて短時間しか行ってはならない(Deliberate extreme flexions of the neck involving either high, low or lateral head carriages, should only be performed for very short periods)。

(2)馬の頭部および頚部を保持または固定する運動を、10分間以上連続で実施してはならない(Movements which involve having the horse’s head and neck carriage in a sustained or fixed position should only be performed for periods not exceeding approximately ten minutes without change)。

(3)騎乗者は、手綱を持つ手や腕を固定した状態での、乱暴な扶助、急激な扶助、または持続性の堅固な圧力を、馬の口に掛けてはならない(The rider is not permitted to use rough, or abrupt aids or apply constant unyielding pressure on the horse’s mouth through a fixed arm and hand position)。

(4)騎乗者は、頚部の疲労やストレスの原因となりうる、いかなるポジションも持続させてはならない(No single neck position should be maintained which may lead to tiredness or stress)。

(5)スチュワード長の許可がある場合を除いて、競技前の準備運動は一時間を越えてはならず、また、複数回の準備運動のあいだには、一時間以上の休憩時間を置かなくてはならない(Only in exceptional circumstances and with the permission of the Chief Steward, may a pre- competition training session exceed one hour. There should be at least one hour break between any training/warm-up periods)。

獣医学的に言えば、ロルクアーによる頚部の過剰屈曲によって、喉頭部位における気道閉塞(Airway obstruction)が起こったり、頚椎関節や頚部筋肉郡への負担が増加する可能性が考えられます。しかし、頚部を“長く深く丸める姿勢”(Long, Deep, and Round:いわゆるLDR姿勢)を自然に取らせる事で、収縮運動に必要な筋肉の発達を促すトレーニング法も実践されていることから、頚部を屈曲させる状態そのものが全て悪であるとは言えないと思います。また、運動の流れの中では、ロルクアーとLDR姿勢の見分けが必ずしも明瞭でない場合も考えられるかもしれません。

そのため、今回の指針の中で、ロルクアー(上述の規定1に該当?)は完全に禁止とはされておらず、また、一般的な頚部の屈曲状態(上述の規定2に該当?)も短時間であれば、ある程度の範囲内で許容されていることは、妥当な決定であるのかもしれません。もちろん今回の規定によって、「短時間ならどんなにキツイ屈曲姿勢を取らせても構わない」というお墨付きが与えられた訳ではありませんし、「10分間以上連続で実施」という規定に引っ掛からないように、「10分間の過剰屈曲運動→数分間の通常運動→10分間の過剰屈曲運動」を無意味に繰り返すようなトレーニング法も、決して許容されるべきではないと思います。

個人的意見としてですが、おそらく今回のスチュワード指針におけるキーワードは、“故意的な”過剰屈曲(Deliberate extreme flexions)という表現ではないかと思います。やはり馬場馬術のトレーニングでは、収縮運動に適した姿勢へと「馬を自然に導く」ことが重要なのであって、騎乗者が勝手に決めたフレームへと「馬を強制的に押し込める」という方針は、見た目の屈曲度合いに関わらず、すべて間違いであると言えるのではないでしょうか。

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