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馬の病気:ボツリヌス症

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ボツリヌス症(Botulism)について。

Clostridium botulinumの産生する神経毒(Neurotoxin)によって、進行性筋虚弱(Progressive muscle weakness)を起こす疾患で、ボツリヌス菌タイプBが最も頻繁に関与しますが、タイプA、C、Dによる症例も報告されています。子馬では通常、胞子摂取(Spores ingestion)によって中毒感染性ボツリヌス症(Toxicoinfectious botulism)(いわゆる振盪子馬症候群:Shaker foal syndrome)を起こしますが、成馬では産生された神経毒に汚染された飼料を摂食したり(いわゆるForage poisoning)、去勢(Castration)や穿孔外傷部へのボツリヌス菌感染から神経毒吸収を起こして発症することが一般的です。

ボツリヌス症のうち子馬の症例では、正常よりも長時間横たわっている所見が観察され、起立させた際には全身性筋振戦(Generalized muscle tremors)を呈し、口から母乳を流涎させたり(Milk drooling)、瞳孔の散大(Mydriasis)などの症状も見られます。一方、成馬の症例では、筋無力症(Myasthenia)と嚥下障害(Dysphagia)を呈し、舌虚弱(Decreased tongue strength)や引きずり歩行(Shuffling gait)などの症状も見られ、病状の悪化に伴って重篤な筋無力症から起立困難を起こします。また、タイプCのボツリヌス症では、特徴的な呼吸数増加を伴わない誇張努力性呼気(Exaggerated expiratory effort)や、頭部の挙上が困難となって重症顔面浮腫(Massive facial edema)を起こすこともあります。起立困難となった成馬の症例では、多くの場合に予後不良で、最終的には横隔膜麻痺(Paralysis of diaphragm)から呼吸困難(Respiratory distress)を起こす危険が高いため、安楽死(Euthanasia)が選択される事が一般的です。

ボツリヌス症の診断としては、特徴的臨床所見を探知することに加えて、舌を口外へ引き出して取り込む速度を観察する手法(いわゆるTongue test)や、穀物飼料を給餌して摂食する速度を観察する手法(いわゆるGrain test)なども用いられます。血清中の毒素はマウス接種試験によって探知することも可能ですが、陽性反応を示すのは多くの場合、最急性発症(Peracute onset)を呈する症例に限られます(マウスよりも馬の方が感受性が高い傾向にあるため)。成馬の症例では糞便中の胞子を、子馬の症例では糞便中の胞子または毒素を探知する手法も有効です。また、特徴的臨床所見に加えて、飼料中にボツリヌス胞子が含まれていることを検査することで推定診断(Presumptive diagnosis)を下される場合もあります。ワクチン接種をされていない馬においては、血清中の中和抗体価(Neutralizing antibody titer)を測定する手法も有効であることが示唆されています。

ボツリヌス症の治療としては、ボツリヌス神経毒の抗血清(Botulinum antiserum)の投与が最優先に行われます。抗血清は一回の投与で充分ですが(半減期は12日)、神経毒が細胞受容体に結合した後では抗血清による治療効果が期待できないため、ボツリヌス症の推定診断が下され次第、速やかに投与することが重要です。また、抗生物質の投与による二次性誤嚥性肺炎(Secondary aspiration pneumonia)の予防、ミネラルオイル投与による腸閉塞(Ileus)の予防、ヒスタミン受容体ブロッカー(Histamine receptor blocker)による胃潰瘍(Gastric ulcer)の予防も推奨されます。多くの症例において嚥下は困難であるため、経鼻胃カテーテルを介しての流動食物の給餌による補助的栄養補給(Supportive alimentation)が必要です。起立困難となった雄馬では、排尿不能となることがあるため、膀胱カテーテル治療(Bladder catheterization)による停滞尿の排出も施されます。横臥位を呈した子馬の症例では、数時間おきに寝返りをうたせて褥瘡(Decubital sore)を防ぎ、補助的酸素療法(Supplemental oxygen therapy)を要する場合もあります。

ボツリヌス症の予後は、摂取された神経毒量に大きく左右されますが、起立が可能な馬では多くの場合、数週間以内に嚥下可能となり快方に向かいますが、歩行症状などの完治には数ヶ月を要することもあります。一方、起立困難で24時間以上の横臥位を呈した成馬の症例では、極めて予後が悪いことが報告されています。振盪子馬症候群を呈した子馬の症例においても、初期病態において適切な処置が下されれば、一週間以内に起立可能になる場合が殆どです。

ボツリヌス症の予防には類毒素ワクチン(Toxoid vaccine)が用いられ、一ヶ月おきに三回の投与が推奨されています。初乳中の抗体濃度を高め子馬の免疫能を維持するため、妊娠牝馬に対して出産の4~6週間前に追加ワクチンを投与することが大切です。

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