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馬の病気:胸膜肺炎

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胸膜肺炎(Pleuropneumonia)について。

細菌感染が肺実質(Pulmonary parenchyma)から胸腔(Pleural space)に波及して、化膿性の胸水貯留(Pleural effusion)を呈する疾患で、原因菌としては、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus zooepidemicus)が最も頻繁に分離されます。胸膜肺炎の危険因子(Risk factor)としては、長距離輸送(Long-distance transportation)、多量の細菌曝露(Massive bacterial exposure)、高強度運動(High-intensity exercise)などが挙げられています。病態経過は、胸膜炎症に伴う非感染性胸水滲出(Sterile pleural exudation)から、細菌侵入に後発する変性好中球(Degenerative neutrophils)の増加へと進行し、さらに線維芽細胞(Fibroblasts)の浸潤に起因する胸膜剥離(Pleural peel)を生じることもあります。

胸膜壁は神経支配が豊富なため、初期病態の胸膜肺炎では急性胸膜痛(Acute pleurodynia)を呈し、疝痛との鑑別診断(Differential diagnosis)を要します。症状の進行に伴って、発咳(Coughing)、鼻汁排出(Nasal discharge)、発熱(Fever)、頻呼吸(Tachypnea)、呼吸困難(Respiratory distress)などの症状を示し、聴診では、腹側胸域での肺音消失または減退、心臓音聴取域の拡大が確認されます。血液検査では、白血球増加症(Leukocytosis)、好中球増加症(Neutrophilia)、フィブリノーゲン増加症(Hyperfibrinogenemia)等が認められます。

胸膜肺炎の診断では、胸部超音波検査(Thoracic ultrasonography)によって、胸水量の推定と排液箇所を確認する方針が有用で、また、胸水の性状(エコー輝度が細胞含有度を反映)、繊維素堆積(Fibrin deposition)、肺辺縁の変則性(Irregularity)、胸膜癒着(Pleural adhesion)なども確認できます。胸水検査(Thoracocentesis)では、蛋白濃度の上昇(正常値:<3.4g/dL)と白血球数の増加(正常値:<8000/uL)が認められ、細胞診断(Cytologic examination)と細菌培養(Bacterial culture)が行われます。しかし、胸水から原因菌が分離されるのは発症馬の六割程度に過ぎないため、気管気管支吸引液(Tracheobronchial aspiration)を用いての細菌培養を併行する事が推奨されています。胸部X線検査(Thoracic radiography)では、胸水貯留による水平線像(Horizontal line)と心臓尾側シルエットの不明瞭化(Obscured cardiac caudal silhouette)が見られ、超音波検査では探知できない深部膿瘍が確認される場合もあります。稀に胸腔内腫瘍(Thoracic neoplasm)から胸水貯留が起こる場合もあるため、胸水検査において、リンパ球増加(リンパ肉腫の場合)、細菌混入や腐敗臭を生じないなどの所見が見られる時には、腫瘍の関与を疑うことも大切です。

胸膜肺炎の治療としては、抗生物質の全身投与(Systemic anti-microbial therapy)が行われ、細菌培養と抗生物質の感受性試験(Susceptibility test)によって、使用薬を選択することが基本とされます。試験結果が判明するまでの初期治療では、原因菌の可能性が高いS. zooepidemicusに効くペニシリン、アンピシリン、セフチオファーに、グラム陰性菌に効くジェンタマイシン、エンロフロキサシンを組み合わせた投薬が推奨されます。嫌気性菌感染が疑われる症例では、メトロニダゾール(経口もしくは経直腸投与)も併用されます。

胸膜肺炎の治療に際しては、少量の胸水は治癒経過に伴って自然吸収されることもありますが、内科治療に不応性(Refractory)の場合、呼吸困難を起こしている場合、胸水性状が化膿性の場合、胸水が腐敗臭を呈する場合、などには外科的に胸水を排出(Surgical drainage of pleural fluid)することが推奨されます。排液のための穿孔部位は超音波検査で決定される事が望ましく、多くの症例において継続的な胸水排液のため、留置胸管(Indwelling chest tube)が胸壁に縫合されます。殆どの胸膜肺炎発症馬では、生成された繊維素で左右の胸腔連絡が遮断されているため、両側性に胸水貯留が起こった症例では、左右の胸壁から別々に胸水を排出することが必要となります。排液後は留置管内へのヘパリン注入により凝固防止が行われ、一方通行弁(One-way valve)を連結することで、空気の迷入を起こすことなく持続的に胸水排出を促すことが可能となります。胸水中に多量の繊維素または壊死組織片(Necrotic debris)が含まれる場合には、5~10リットルの生理食塩水を用いての胸腔洗浄(Pleural lavage)が施される事もあります。大径の胸膜膿瘍や膨大な繊維素貯留が見られる症例では、開胸術(Thoracotomy)を介しての外科的病巣清掃(Surgical debridement)を要する場合もありますが、重度の気胸(Pneumothorax)を併発する危険もあるため、慎重に施術することが大切です。

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