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馬の病気:息労

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息労(Heaves)について。

下部気道の過剰粘液分泌(Excessive mucus production)、好中球集積(Neutrophil accumulation)、気管支過敏症(Bronchial hyperreactivity)、気管支痙攣(Bronchospasm)に起因して、慢性呼吸困難(Chronic respiratory distress)を呈する疾患で、回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)とも呼ばれます。人間に見られる慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)とは病因論に大きな違いがあるため、馬の息労に対してCOPDという呼称を用いることは適当でないという警鐘が鳴らされています。

息労は吸引されたカビ(Molds)または有機物粉塵(Organic dusts)に対する、気管支のアレルギー反応(Hypersensitivity)が病因として挙げられており、遺伝的素因(Genetic predisposition)が関与している可能性も示されています。息労は、大食細胞(Macrophage)の炎症誘発物質生成(TNF-alpha, IL-1beta, IL-8, NF-kB, etc)を特徴とする自然免疫反応(Innate immune response)と、ヘルパーT細胞の免疫グロブリン生成(IgE)を特徴とする適応免疫反応(Adaptive immune response)の両方が作用していると考えられ、また、他の炎症性物質(Histamine, Prostaglandin, Leukotriene, etc)も二次的に気管支収縮(Bronchoconstriction)を亢進させている事が示唆されています。また、晩春~夏季~初秋にかけて放牧馬に発症する類似疾患は、夏季牧草関連性閉塞性肺疾患(Summer pasture-associated obstructive pulmonary disease: SPAOPD)と呼ばれますが、原因となる真菌または過敏性物質はハッキリとは特定されていません。

息労の初期病態では、僅かな強調呼吸(Accentuated breathing)が観察されるのみですが、運動時には発咳(Coughing)と白色鼻汁排出(White nasal discharge)が見られる事もあります。重度の病態では、頻呼吸(Tachypnea)、鼻孔拡張(Nostril flaring)、発作性発咳(Paroxysmal coughing)、腹式呼気動作(Abdominal expiratory effort)を呈し、慢性症例では腹斜筋肥厚に伴う息労線(いわゆる“Heaves line”)の出現や、体重減少(Weight loss)が見られる場合もあります。聴診では五~六割の症例で異常音が認められ、呼気性(Expiratory)の湿性ラ音(Crackles)と喘鳴音(Wheezes)を特徴とします。気管気管支吸引液(Tracheobronchial aspiration)または気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage)を用いての細胞診断(Cytologic examination)では、非変性好中球(Non-degenerative neutrophils)の集積所見から、感染性肺炎(=変性好中球集積:Degenerative neutrophils accumulation)や肺虫症(=好酸球集積:Eosinophils accumulation)との鑑別を行います。内視鏡検査(Endoscopy)では、気管や気管支の滲出物(Tracheal bronchial secretion)、および、気管支壁の炎症性変化が観察されます。血液検査は通常、正常値範囲内ですが、重度の症例では好中球増加症(Neutrophilia)やリンパ球減少症(Lymphopenia)が認められる場合もあります。X線検査は、重篤な症例を除いては一般に正常像ですが、内科的療法に不応性の症例では、気管支または細気管支の変形像(Deformation of bronchi or bronchioles)の有無を確認します。超音波検査(Ultrasonography)では、肺胞過剰膨張(Alveolar Hyperinflation)に伴う肺尾側縁の変位(Shift of caudal lung border)が見られる場合もあります。皮内試験もしくは血清試験を用いて、アレルゲンを特定する手法も試みられていますが、感度はそれほど高くなく、疾病のスクリーニングには適当でない事が提唱されています。

息労の治療指針としては、飼養環境管理(Environmental management)を第一とし、補助的に内科治療を実施することを原則とします。息労発症馬は、可能な限り屋外飼養域に移動させ(冬季を含め)、牧草地への放牧時間を増やし(SPAOPDを疑う症例を除いて)、飼料を乾草からペレットやヘイキューブへ変更すること、藁馬房から粉塵の少ない敷料へ変更すること(Wood shavings, Shredded paper, Peanut kernels, Peat moss, etc)、などが推奨されています。

息労の内科療法では、気管支拡張剤(Bronchodilator)として、平滑筋弛緩作用(Smooth muscle relaxation)を有するベータ2作動薬(Beta2-adrenegic agonists: Clenbutarol, Albuterol, Fenoterol, Salmeterol, etc)を用いて、気管支収縮(Bronchoconstriction)の改善が試みられます。特に、エアロゾル化する薬物を用いての吸引療法(Inhalation therapy)は、手技的に簡易で(飼主でも実施可能)、肺組織の薬物濃度を高め、全身性副作用を防ぐことができるため、経口および筋肉内投与薬よりも好んで実施されています。また、抗炎症作用を有するコルチコステロイド(Dexamethasone, Prednisolone, Triamcinolone, etc)投与も併用され、急性病態では経口または筋肉内注射が行われますが、ベータ2作動薬と併行して吸引療法での使用の方が一般的です。この際には、コルチコステロイド吸引前に、ベータ2作動薬を吸引させることで、薬物吸収度を向上させる効果が期待されています。過補液療法(Overhydration therapy)と気管支拡張剤投与を併用して、粘液動化作用(Mucokinetic effect)を期待する治療法も報告されていますが、呼吸困難(Dyspnea)の危険を考慮して慎重に実施することが大切です。そして、重篤な急性症状を呈する症例では、経鼻酸素療法(Nasal oxygen therapy)や、フロセマイド投与によって二次的に気管支弛緩を促す方法が試みられる場合もあります。

息労に対して飼養環境管理が奏功した症例では、予後は一般に良好ですが、粉塵に曝露されると症状再発が見られる場合が殆どで、長期に渡って間欠的吸引療法等で病態管理することが必要とされます。売却や輸送などで、止むを得ず粉塵の多い環境に置かれる時には、抗アレルギー薬(Cromoglycate, Nedocromil, etc)の投与で、一時的に息労症状を抑える試みも報告されています。

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