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馬の病気:肩関節脱臼

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肩関節脱臼(Shoulder joint luxation)について。

馬の肩関節(Shoulder joint)(=肩甲骨上腕関節:Scapulohumeral joint)の脱臼では、主に外側方向への脱臼および亜脱臼(Lateral lixation/subluxation)を生じ易く、ポニーにおける発症率が高いことが示唆されています。

肩関節の脱臼や亜脱臼は、転倒や障害飛越の踏み切りの際に、屈曲位の前肢が激しく牽引および捻れる動作(Pulling and twisting the flexed limb)によって発症すると考えられており、上腕二頭筋腱(Biceps brachii muscle tendon)、棘下筋腱(Infraspinatus muscle tendon)、肩甲上腕靭帯(Glenohumeral ligament)などの周囲軟部組織の損傷を併発することが一般的です。また、肩甲上神経麻痺(Suprascapular nerve paralysis)(いわゆるSweeny)によって棘上筋(Supraspinatus muscle)および棘下筋(Infraspinatus muscle)の萎縮(Atrophy)が生じたり、肩甲骨の関節窩上結節(Supraglenoid tubercle)が骨折した場合に、この骨折片が除去されることで、肩関節の不安定性(Shoulder joint instability)を招いて、脱臼や亜脱臼に至ることもあります。

肩関節脱臼の症状としては、不負重性跛行(Non-weight-bearing lameness)と広範囲にわたる肩部腫脹(Extensive shoulder swelling)を示し、肩関節のレントゲン検査(Radiography)によって確定診断(Definitive diagnosis)が下されます。また、肘関節や手根関節を屈曲させて肢を保持する肢勢(Held limb with Elbow and carpal joint flexion)が見られ、この際、外側や頭側方向への脱臼(Shoulder luxated laterally or cranially)の場合には遠位肢の内転(Distal limb adduction)を示し、内側方向への脱臼(Shoulder luxated medially)では遠位肢の外転(Distal limb abduction)を示します。肩部の触診では、捻髪音(Crepitation)が聴取される症例もあり、また、外側や頭側方向への脱臼では肩関節外側面において上腕骨大結節(Greater tubercle of humerus)が顕著に触知され、内側方向への脱臼では肩甲骨の関節窩外側唇(Lateral lip of scapular glenoid)が顕著に触知されます。経過が二週間以上に及んだ症例では、筋萎縮が確認できるようになる事が知られています。

肩関節の亜脱臼を起こした症例では、軽度~中程度跛行(Mild to moderate lameness)や、肩部および上腕部の深部圧痛(Pain on deep palpation)が認められ、肩関節の診断麻酔(Diagnostic anesthesia of shoulder joint)による疼痛部位の限局化(Pain localization)を要する場合もあります。また、超音波検査(Ultrasonography)による周囲軟部組織の損傷度合いを確認することも重要です。肩関節の脱臼が認められた症例、および亜脱臼が疑われる症例では、肩部のレントゲン検査によって、肩甲骨や上腕骨の骨折(Scapular/Humeral fracture)を除外診断することも大切です。

肩関節脱臼の治療では、全身麻酔下(Under general anesthesia)による脱臼整復が必要とされ(保定が容易な子馬やミニチュアホースを除いて)、横臥位(Lateral recumbency)での整復では、馬体を固定物(壁、柵、杭、etc)にロープ等で保定した後、補助者数名が前腕部または繋部をロープで遠位側に牽引しながら、術者が上腕骨近位端を軸側方向(外側脱臼の場合)、または尾側方向(頭側脱臼の場合)、または外側方向(内側脱臼の場合)に圧迫して、上腕骨頭を肩甲骨の関節窩の中に推し戻します。また、背臥位(Dorsal recumbency)での整復では、遠位肢を起重機(Hoist)で吊り上げることで、馬の体重を利用して遠位肢に充分な牽引力を作用できることが示唆されています。上腕骨頭が関節窩内に戻った場合には、クリック音が聴取できる事もあり、上腕部をスムーズに前後に動かすことが可能となる所見や、その際に捻髪音(Crepitation)が聴取されない所見などで、脱臼が整復された事を確認できる場合もあります。また、術中レントゲン撮影(Intra-operative radiography)によって脱臼整復を確かめたり、整復によって関節窩唇に損傷を生じていないかを確認する手法も有効で、関節腔内に破片骨折片が認められた場合には、速やかに関節鏡手術(Arthroscopy)で骨片除去を行うことが大切です。慢性経過を示した症例では、30分以上にわたって徐々に遠位肢を引っ張る必要があることもあります。

肩関節脱臼の整復後には、馬房に曳き手でつないで寝起きを制限し、最低二ヶ月の馬房休養(Stall rest)を行うことで、関節周囲軟部組織の修復を待ち、脱臼の再発予防につとめることが推奨されています。肩関節亜脱臼の治療では、六週間以上の馬房休養に併行して、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与が行われ、二週間目から曳き馬運動(Hand-walking exercise)を開始する指針が推奨されています。脱臼の整復後、もしくは慢性経過を示した亜脱臼の症例において、肩関節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)の合併症を起こした場合には、コルチコステロイドおよびヒアルロン酸の関節注射(Joint injection)が応用される事もあります。また、ミニチュアホースの症例において難治性の病態を示した場合には、延命療法(Salvage procedure)として肩関節固定術(Shoulder arthrodesis)を介して、関節不動化(Joint immobilization)を施す療法も報告されています。

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