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馬の病気:伸筋腱断裂

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伸筋腱断裂(Extensor tendon rupture)について。

橈側手根伸筋腱(Extensor carpal radialis tendon)の完全断裂(Complete rupture)および部分断裂(Partial rupture)は、馬がつまずいた際などの手根過剰屈曲(Carpal overflexion)を生じる外傷が原因となり、通常は手根腱鞘(Carpal sheath)の内部で発症します。

橈側手根伸筋腱の断裂を生じた症例では、前肢を前方に運ぶ際に手根関節の過屈曲運動(Excessive carpal flexion during limb protraction)を起こすため、羅患肢の伸展時における二重動作(Double movement in limb extension)や、蹄弧が正常肢よりも高くなる歩様(High arc of foot fright)が観察されます。完全断裂の場合は手根屈曲時の疼痛(Pain on carpal flexion)が見られますが、慢性経過を示した部分断裂の場合には、手根腱鞘の膨満(Carpal sheath distention)を生じるのみで無疼痛性に進行する病態もあります。橈側手根伸筋腱断裂の診断は、通常は触診と視診で下されますが、超音波検査(Ultrasonography)や手根腱鞘の造影レントゲン検査(Contrast radiography)が用いられる場合もあります。

橈側手根伸筋腱断裂の治療では、手根腱鞘の切開術を介して断裂した腱の縫合が施される事もありますが、断裂端同士の直接癒合は必ずしも重要でないという指針も提唱されており、腱鞘鏡手術(Tenoscopy)を介して病巣清掃(Debridement)と腱鞘の洗浄(Sheath lavage)のみが実施される症例もあります。いずれの手法においても、術後には副木固定術(Splint fixation)もしくはギプス固定術(Casting)によって手根関節を不動化(Immobilization)することで、術部の保護を行ったり(腱を縫合した場合)、断裂部の繊維性癒合(Fibrous union)を促すこと(腱を縫合しない場合)が重要です。

橈側手根伸筋腱断裂の外科的治療後には、超音波検査によって患部の治癒過程が確認され次第、手根関節の手動屈曲(Manual flexion)によるリハビリで、周囲軟部組織の収縮(Surrounding soft tissue contraction)を防いで、手根関節可動域(Range of carpal flexion)の維持に努めます。橈側手根伸筋腱の完全断裂または部分断裂では、慢性的に軽度跛行(Chronic mild lameness)を呈する症例も多く、競走や競技復帰における予後はあまり良くない事が報告されています。

総指伸筋腱(Common digital extensor tendon)の断裂は子馬に多く見られ、手根関節の屈曲性肢変形症(Carpal flexural deformity)に起因することが一般的で、遺伝的素因(Genetic predisposition)や子宮内姿勢異常(Intrauterine malpositioning)などの関与も指摘されています。

総指伸筋腱断裂は殆どの症例において手根腱鞘内部で発症するため、手根背側面における腱鞘膨満が認められ、触診によって腱の断裂端が触知できる場合もあります。総指伸筋腱断裂の診断は、触診と視診で下される事が一般的ですが、超音波検査によって腱鞘炎(Tenosynovitis)の重篤度を確かめたり、レントゲン検査によって立方骨未成熟(Immature cuboidal bone)や成長板異常(Growth plate anomaly)の併発を確認することも大切です。

総指伸筋腱断裂の治療では、通常は断裂端同士の縫合は必要とされず、副木固定やギプス固定を介して断裂部の繊維性癒合を促す療法が一般的です。しかし、過度に長期にわたる関節固定は屈曲性肢変形症を悪化させる危険があるため、経時的な超音波検査で腱断裂部の治癒をモニタリングしながら、管理運動療法(Controlled exercise therapy)の開始時期を的確に判断することが重要です。

外側指伸筋腱(Lateral digital extensor tendon)および総指伸筋腱は、管部において皮膚直下を走行しているため、外傷性に裂傷(Laceration)を生じる事もあります。外側指伸筋腱および総指伸筋腱の裂傷を起こした症例では、手根関節より下部の遠位肢伸展機能(Distal limb extension function)が減退するため、歩様の頭側相(Swing phase of strides)において、蹄を前方に投げ出す仕草(Exaggerated rapid foot flip)や間欠性の踏み誤り(Intermittent knuckling)などが観察されます。

外側指伸筋腱および総指伸筋腱の裂傷に対する治療では、創傷部の清掃、洗浄、皮膚縫合(可能な場合)を施し、腱の断裂端同士の縫合は必ずしも重要でないことが提唱されています。術後には、副木固定術や全肢ギプス装着(Full limb cast application)が施され、通常は腱の断裂部は繊維性癒合を起こし、遠位肢の伸展機能を回復できることが報告されています。

また殆どの症例において、外側指伸筋腱および総指伸筋腱の裂傷後の数日間で、患馬自身が羅患肢を振り動かす動作を増やすなどの歩様適応(Gait adaptation)を行って、踏み誤りを起こさない歩様を学ぶようになる事が知られています。このため、これらの伸筋腱断裂裂傷の予後は比較的良好で、創傷部の感染や腐骨形成(Sequestrum formation)を続発しない限りは、競走や競技に復帰できる可能性が高いことが報告されています。

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