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馬の病気:軟骨下骨嚢胞

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軟骨下骨嚢胞(Subchondral bone cyst)について。

関節軟骨の深部に骨嚢胞を生じる疾患で、内側大腿骨骨頭(Medial femoral condyle)、第三中手骨や第三中足骨の内側顆(Third metacarpal/metatarsal bone medial condyle)、遠位基節骨(Distal aspect of proximal phalanx)などの圧迫負荷の掛かる関節面に好発します。一般に、離断性骨軟骨炎(Osteochondritis dissecans)とならぶ骨軟骨症(Osteochondrosis)の一病態であると考えられていますが、炎症性の発生起序も示唆されています。病因(Etiology)としては、関節軟骨の裂傷部に関節液侵入(Synovial fluid intrusion)が起こり、体重負荷に伴う水圧作用(Hydraulic action)によって嚢胞が形成されるという説と、軟骨下骨の損傷部の炎症性物質(IL-1, IL-6, PGE2, etc)に起因する、破骨細胞の動因(Osteoclasts recruitment)と骨吸収(Bone resorption)から嚢胞形成に至るという説が有力ですが、軟骨内骨化障害(Endochondral ossification disturbance)や原発性骨内線維増殖症(Primary intraosseous fibroplasia)などが原因となるという仮説(Hypothesis)もあります。

内側大腿骨骨頭の骨嚢胞では、間欠性に中程度~重度の跛行(Intermittent moderate to severe lameness)を呈し、近位肢屈曲試験(Proximal limb flexion test)で陽性を示しますが、内側大腿脛関節(Medial femorotibia joint)の膨満はあまり顕著ではありません。第三中手骨および第三中足骨の内側顆における骨嚢胞では、跛行は軽度~中程度ですが、関節液増量に伴う球節膨満(Fetlock joint effusion)が触診されます。骨嚢胞と関節腔が連絡していない場合では(約三分の二の症例)、関節診断麻酔(Diagnostic joint block)を用いても明らかな跛行改善が見られない事もあります。レントゲン検査(Radiography)では、X線透過性の嚢胞像、嚢胞周囲の骨増殖像、関節面の欠損部などを確認します。特に内側大腿骨骨頭の骨嚢胞では、タイプ1=深さ10mm以下の浅い皿状の凹状嚢胞(Shallow-saucer concave shape)、タイプ2=深さ10mm以上のドーム状・円錐状嚢胞(Domed/conical shape)、タイプ3=平坦または不規則な輪郭の関節面(Flattened/irregular contour aurface)、という分類法が用いられます。超音波検査(Ultrasonography)では、大腿骨骨頭面を観察することが可能で、また核医学検査(Nuclear scintigraphy)は高齢馬に見られる、骨関節炎(Osteoarthritis)に併発した骨嚢胞の診断に有効です。

軟骨下骨嚢胞の治療としては、馬房休養(Stall rest)、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)、コルチコステロイドの関節注射等による保存的療法(Conservative treatments)は治癒率が低いことから、関節鏡手術(Arthroscopy)を介しての骨嚢胞の掻爬術(Curettage)と病巣清掃(Debridement)の実施が推奨されています。術後には、嚢胞内へのコルチコステロイド注射(Intralesional corticosteroid injection)もしくは、海綿骨(Cancellous bone)、リン酸三カルシウム顆粒(Tricalcium phosphate granules)、生分解性骨セメント(Biodegradable bone cement)、上皮小体ホルモン濃縮繊維素ハイドロゲル(PTH-enriched fibrin hydrogel)などの嚢胞内充填が行われる事もあります。骨嚢胞内面のドリル穿孔によって血管新生と骨形成を刺激する手法(Osteostixis)は、嚢胞拡大を引き起こすため禁忌とされています。骨嚢胞の形成部位によっては関節面からの掻爬が困難な場合もあり、経皮質骨アプローチ(Trans-cortical approach)を要することがあります。内側大腿骨骨頭の骨嚢胞の初期病態では、サイズの小さい骨嚢胞を掻爬することで内腔拡大に繋がる可能性が示唆されており、まず最初に嚢胞内へのコルチコステロイド注射を行って、不応性の症例にのみ関節鏡手術を実施する指針も示されています。また膝関節および球節の骨嚢胞に対しては、自家性骨軟骨移植(Autologous osteochodral grafting)を用いてのモザイク関節形成術の応用も報告されています。

軟骨下骨嚢胞の予後としては、掻爬術のみで治療された骨嚢胞では、回復に数ヶ月~一年を要しますが、嚢胞内への抗炎症剤または骨形成促進物質の投与によって、早期かつ良好な治癒が期待できることが示されています。術後に骨関節炎を続発すると、予後が悪化することが報告されていますが、多くの症例でレベルを下げての競走および競技継続が可能である事が示唆されています。また、初期病態の骨嚢胞に対するコルチコステロイド注射では、比較的に良好な予後が報告されており、特に片側性跛行の症例においては、九割近い跛行の改善率が報告されています。

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