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馬の文献:尺骨骨折(Swor et al. 2003)

「24頭の馬のタイプ1b肘頭骨折に対するプレート固定による治療成績」
Swor TM, Watkins JP, Bahr A, Honnas CM. Results of plate fixation of type 1b olecranon fractures in 24 horses. Equine Vet J. 2003; 35(7): 670-675.

この症例論文では、タイプ1bの肘頭骨折(Olecranon fracture)を呈した24頭の患馬における、プレート固定術(Plate fixation)を介しての外科的療法の治療成績が報告されています。この症例報告では、24頭の患馬のうち、プレート固定術が応用されたのは20頭、馬房休養(Stall rest)による保存性療法(Conservative treatment)が応用されたのは二頭で、残りの二頭は経済的な理由などから安楽死(Euthanasia)が選択されました。

結果としては、プレート固定が応用された20頭の患馬のうち、退院したのは19頭(生存率:95%)で、手術から一年目に無跛行であったのは16頭(治癒率:80%)であったことが示されました。また、二年目以降の経過追跡(Follow-up)ができた馬のうち、その時点で二歳齢以上に達していた12頭を見ると、無跛行で騎乗使役に用いられたのは九頭(騎乗復帰率:75%)、繁殖使役に用いられたのは三頭であったことが報告されています。さらに、術後のレントゲン再検査で、インプラント破損(Implant failure)、近位骨片の分割化(Splitting of proximal fragment)、骨端軟骨の早期閉鎖(Premature closure of epiphysis)などの術後合併症(Post-operative complication)を呈した症例は、一頭もありませんでした。一方、保存性療法が応用された二頭では、治癒率は50%(1/2頭)であったことが報告されています。このため、子馬のタイプ1b肘頭骨折に対する内固定術(Internal fixation)では、プレート固定によって十分な骨折治癒と良好な予後が達成され、正常歩様への回復と騎乗使役への復帰を果たす馬の割合が、比較的に高いことが示唆されました。

この論文では、子馬の肘頭における骨端骨折(Physeal fracture)(=タイプ1骨折)のうち、非関節性で骨端板のみを含む場合(Non-articular fracture involving only the physeal plate)をタイプ1a骨折、関節性または非関節性で骨端板と近位半月状切痕を含む場合(Articular or nonarticular fracture involving the physeal plate and the proximal semilunar notch)をタイプ1b骨折と定義されました。そして、症例選択(Case selection)された1989~2001年のあいだに肘頭骨折の診断が下された77頭の来院馬うち、タイプ1b骨折は31%(24/77頭)を占めていました。

この論文では、レントゲン検査において、関節性骨折(Articular fracture)を起こしたのは79%、破片骨折片(Comminuted fragment)を伴ったのは50%、非変位性もしくは最小変位性骨折(Non/Minimally-displaced fracture)を起こしたのは48%であったことが確認されました。そして、重篤な骨折片変位(Severe fragment displacement)を呈していた症例では、慢性跛行(Chronic lameness)によって騎乗復帰できない危険性が高いという治療成績が示された反面、肘突起(Anconeal process)が外科的除去(Surgical removal)された場合や、骨折線が関節腔(Joint cavity)に達していた場合でも、骨折治癒や予後には有意な悪影響(Adverse effect)が出なかった、という考察がなされています。人間の整形外科の文献では、肘頭部の50~80%が除去されても、肘関節の安定性(Elbow joint stability)には影響が出ない、という知見もあります(Horne and Tanzer. J Trauma. 1981;21:469)。

一般的に、馬の肘頭骨折では、骨端部に達する関節性の骨端骨折(Articular physeal fracture)において、これをタイプ1bとする分類法と(Donecker et al. JAVMA. 1984;2:183)、タイプ2とする分類法がありますが(Easley et al. Eq Vet Sci. 1983;3:5)、この論文では、関節性か非関節性かに関わらず、骨端部に達する骨端骨折をタイプ1bとする独自の分類法が応用されました。また、タイプ1b骨折を、サルター・ハリスのタイプ2骨折(Salter-Harris Type-2 fracture)と定義される場合がある反面(Denny et al. EVJ. 1987;19:319)、馬の肘頭は“Epiphysis”ではなく、厳密には“Apophysis”であることから、サルター・ハリスの分類法を応用するのは適当ではない、という提唱もなされています(Watkins. Equine Surgery. 1999. pp831)。

一般的に、馬のタイプ1bの肘頭骨折においては、サイズの小さい近位骨折片に螺子挿入することになるプレート固定では、骨片が割れてしまうなどの問題が生じ易いため、ピンとテンションバンドワイヤーを用いた手法が有用である、という知見も示されています(Martin et al. JAVMA. 1995;207:1085)。しかし、この症例報告では、慎重な施術によって、プレート設置に起因する合併症や上腕三頭筋付着部(Triceps brachii muscle insertion)に対する外科的侵襲(Surgical invasion)も最小限に防がれたことが報告されています(切開創の合併症を起こしたのは三頭のみ)。また、プレート設置に際しては、螺子先端が関節面に突き抜けたり(=骨関節炎を引き起こす)、橈骨皮質骨面(Caudal cortex of radius)に達していないかを(=肘関節異形成を引き起こす)、術中レントゲン検査(Intra-operative radiography)で確認することが重要である、と提唱されています。

この論文では、外科的療法が応用された20頭のうち、開放骨折(Open fracture)を呈してプレート固定が応用された一頭では、細菌感染(Bacterial infection)を起こすことなく、良好な予後が示されました。一方、閉鎖骨折(Closed fracture)を呈して、プレート固定後に術創への細菌感染を起こした二頭では、速やかなプレート除去が行われましたが、いずれも肘関節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)を続発して、繁殖用使役への復帰にとどまったことが報告されています。また、この論文では、感染が起きない限りは、プレートを除去しない方針が取られ、インプラントを残存させることが予後に悪影響をもたらす、という成績は認められませんでした。そして、術後の14ヶ月目に、骨折とは無関係の原因で安楽死となった一頭の剖検(Necropsy)では、骨折側と正常側の肘頭は見分けが付かず、プレートは骨組織内に埋没されていたことが報告されています。

この論文では、22頭のタイプ1b肘頭骨折の罹患馬のうち、牝馬は54%、牡馬は46%と、性別間に有意差はなく、また、患馬の平均週齢は26週齢(範囲:6~52週齢)、平均体重は250kg(範囲:159~391kg)であったことが報告されています。

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馬の文献:尺骨骨折(Hanson et al. 1997)

Blog_Litr0310_Pict03_#09

「三種類の馬の尺骨固定法の比較」
Hanson PD, Hartwig H, Markel MD. Comparison of three methods of ulnar fixation in horses. Vet Surg. 1997; 26(3): 165-171.

この研究論文では、尺骨骨折(Olecranon fracture)に対する内固定法(Internal fixation)に有用な術式を評価するため、15組の屍体前肢(Cadaveric forelimb)の尺骨に施した骨切術(Osteotomy)の尾側皮質骨面(Caudal cortex)を、ダイナミック・コンプレッション・プレート(Dynamic compression plate: DCP)、ピンとテンション・バンド・ワイヤー(Tension band wire)、プロトタイプのグリッププレート(Protootype of grip plate)、などの術式で整復し、上腕三頭筋(Triceps brachii muscle)の牽引力を再現する肘頭緊張試験(Olecranon process tensile examination)によって、この三種類の整復法における物理的強度の生物力学的比較(Biomechanical testing)が行われました。

結果としては、単一回負荷試験(Single cycle loading test)において、DCP固定法とピン&ワイヤー固定法は、グリッププレート固定法に比べて、有意に低い軸性変位(Axial displacement)を示しました。また、周期性負荷試験(Cyclic loading test)において、DCP固定法は、ピン&ワイヤー固定法およびグリッププレート固定法に比べて、有意に高い疲労耐性(Fatigue resistance)(=インプラントが破損するまでの負荷回数)を示していました。このため、馬の尺骨骨折に対する外科的療法では、DCPを用いての内固定法によって、他の手法よりも堅固な骨折整復が達成できることが示唆されました。また、三種類の整復法が耐えうる負荷は、DCP固定法が約2700ニュートン、ピン&ワイヤー固定法では約1800ニュートン、グリッププレート固定法では約900ニュートンであったことが報告されています。

一般的に、馬の肘頭突起(Olecranon process)が上腕三頭筋から負荷される緊張力は(体重450kgの馬の場合)、約1100ニュートンの静的負荷(Static loading)、約2200ニュートンの動的負荷(Dynamic loading)であると推定されています。このため、このレベルの緊張力に耐性を持たせるには、DCP固定(=2700ニュートンに耐える)による尺骨骨折部の整復が必要であると考えられます。一方、他の文献では(Martin et al. JAVMA. 1995;207:1085)、体重250kg未満の子馬~若齢馬に対しては、ピン&ワイヤー固定法でも十分な強度の内固定が達成できることが提唱されています。体重250kgの馬の場合には、肘頭突起に掛かる緊張力は、約600ニュートンの静的負荷、および約1200ニュートンの動的負荷であると推定され、この研究では、ピン&ワイヤー固定法(=1800ニュートンに耐える)による尺骨骨折部の整復でも十分な強度の内固定が実施できる、という裏付けとなるデータが示されました。

この研究では、ピン&ワイヤー固定法におけるワイヤーの止め方として、捻り結び法(Twist-knot technique)が実施されましたが、インプラント破損は、この結び目の下部でのワイヤー破損のかたちで生じており、ワイヤーを捻ることでその周辺部に金属疲労(Metal fatigue)を起こした可能性が示唆されました。他の文献では、捻り結び法はワイヤー強度に影響しないという知見や(Oh et al. Clin Orthop 1985;192:228)、二重ループ法(Double-loop technique)のほうが捻り結び法よりも高い強度を得られるという報告(Blass et al. Vet Surg. 1986;15:181)、捻り結び法のほうが二重ループ法よりも強度が高いという報告(Wilson et al. JAVMA. 1985;187:389)など、様々な相反する結果(Conflicting results)が示されています。一方、この論文の発表時には一般的でなかった、ワイヤーの末端同士を捻ることなくクランプなどを用いて保持させる手法によって、より強度の高い内固定法が実施できる可能性があるかもしれません。

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馬の病気:尺骨骨折

馬の文献:尺骨骨折(Murray et al. 1996)

「フックプレートを応用した馬の尺骨骨折の治療」
Murray RC, Debowes RM, Gaughan EM, Bramlage LR. Application of a hook plate for management of equine ulnar fractures. Vet Surg. 1996; 25(3): 207-212.

この症例報告では、尺骨骨折(Olecranon fracture)に対して、フックプレート(Hook plate)を用いての内固定法(Internal fixation)が応用された十頭の子馬(七日齢~六ヶ月齢、91~228kg)の治療成績が報告されています。

この症例論文の術式では、深指屈筋(Deep digital flexor muscle)と外側尺骨筋(Ulnaris lateralis muscle)のあいだからアプローチし、三頭筋腱付着部(Insertion of the tendon of triceps muscle)に穿刺切開創(Stab incision)を設けて、フックプレートの鉤部分を肘頭に槌(Mallet)で打ち込み、この骨片に固定されたプレートを操作することで骨折箇所を適合させてから、遠位側のプレート孔に螺子挿入することで、骨折部の整復が行われました。また、四頭の患馬においては、十分な骨片間圧迫(Inter-fragmentary compression)を掛けるため、テンション作用装置(Tension device)も併用されました。

結果としては、十頭の患馬のうち七頭は無事に退院して、跛行再発(Lameness recurrence)を示すことなく騎乗に用いられたことが報告されています。また、安楽死(Euthanasia)となった三頭では、フックプレートの変形および損失(Plate deformation/failure)、テンション作用装置が設置された箇所での尺骨骨折、遠位螺子の脱落(Pull-out of distal screws)とその後の盲腸穿孔(Cecal perforation)、などが原因となっていました。このため、子馬の尺骨骨折に対する外科治療では、フックプレートを応用しての内固定法によって、十分な骨折治癒と良好な予後が達成され、騎乗使役に復帰できる場合が多いことが示唆されました。

この症例報告では、外科医の判断で各患馬へのフックプレート応用の是非が判断され、十頭の症例の選択基準(Inclusion criteria)は明確には定義されていません。一般的に、馬の尺骨骨折において、近位部骨折片(Proximal fracture fragment)のサイズが小さい場合(タイプ1a、タイプ1b、タイプ3など)には、この骨片内に螺子を挿入することなく、鉤部分の打ち込みだけが行われるため、骨折片が割れてしまう危険が少なく、より堅固な内固定が達成できると提唱されています。また、三頭筋付着部の外科的侵襲(Surgical invasion)を抑えることができる、という利点もあるかもしれません。しかし、AO/ASIF規格のフックプレートは、全長が123mmと短く、遠位部の骨折や成馬の尺骨に対しての応用は難しいと考えられます。

この症例論文では、尺骨骨折の病態として、タイプ1a骨折(非関節性骨端骨折:Non-articular physeal fracture)が二頭、タイプ1b骨折(関節性骨端骨折:Articular physeal fracture)が四頭、タイプ2骨折(関節性横骨折:Articular transverse fracture)が一頭、タイプ3骨折(非関節性骨折:Non-articular fracture)が一頭、タイプ4骨折(粉砕骨折:Comminuted fracture)が二頭などとなっていましたが。サンプル数が少ないため、骨折タイプ別に見る、フックプレート固定術の治療効果は評価されていません。

この症例論文では、五頭の症例において、螺子挿入されないプレート孔が残されましたが、このうち四頭で、フックプレートの変形、腐骨形成(Sequestrum formation)、再骨折(Refracture)などの術後合併症(Post-operative complication)を続発していました。このため、インプラント損傷を予防するため、全てのプレート孔に螺子を挿入するという、AO/ASIF内固定法の基本ルールを遵守することが重要であると提唱されています。また、腐骨形成を発症した一頭の症例では、二度目の手術でプレートの外科的除去(Surgical removal)と、腐骨の病巣清掃(Debridement)が行われ、良好な予後を示したことが報告されています。

この症例論文では、プレート変形(=鉤部分が延びてしまった)が起こった二頭の症例は、いずれもタイプ1b骨折で、補助なしの麻酔覚醒(Uncontrolled anesthesia recovery)が行われていました。このため、サルターハリスのタイプ2というやや不安定な骨折形状や、麻酔覚醒時にふらついて罹患肢に過剰な体重負荷が生じることなどが、プレート変形の発生に関与していると考察されています。さらに、フックプレートが、尺骨の正中軸(Sagittal axis)から僅かに内外に外れた位置に設置されていれば、プレートへと作用される肘関節を伸展させようとする負荷(=プレートの鉤部分を延ばそうとする負荷)を減退できた可能性もあると考えられました。

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馬の病気:尺骨骨折

馬の文献:尺骨骨折(Martin et al. 1995)

「テンションバンドワイヤーを用いての馬の尺骨骨折の治療:1980~1992年の22症例」
Martin F, Richardson DW, Nunamaker DM, Ross MW, Orsini JA. Use of tension band wires in horses with fractures of the ulna: 22 cases (1980-1992). J Am Vet Med Assoc. 1995; 207(8): 1085-1089.

この症例報告では、尺骨骨折(Olecranon fracture)に対して、テンションバンドワイヤー(Tension band wire)を用いての内固定法(Internal fixation)が応用された22頭の馬の治療成績が報告されています。

この症例論文では、馬の尺骨骨折の病態を、他の文献と同様に、以下の五種類に分類しています。タイプ1a:非関節性の骨端骨折(Non-articular physeal fracture)、タイプ1b:関節性の骨端骨折(Articular physeal fracture)、タイプ2:単純関節性骨折(Simple articular fracture)、タイプ3:非関節性骨折(Non-articular fracture)、タイプ4:粉砕骨折(Comminuted fracture)、タイプ5:尺骨遠位幹部骨折(Distal ulnar shaft fracture)。そして、骨折整復(Fracture repair)の術式としては、ワイヤーのみ、ワイヤー+ピン、ワイヤー+螺子、ワイヤー+ピン+螺子、などの手法が選択されました。

結果としては、22頭の患馬のうち、退院したのは18頭で(生存率:82%)、経過追跡(Follow-up)ができた17頭のうち、跛行再発(Lameness recurrence)を示すことなく騎乗使役に復帰したのは76%(13/17頭)であったことが報告されています。このため、馬の尺骨骨折に対しては、テンションバンドワイヤー固定によって、十分な骨折治癒と良好な予後が達成され、騎乗使役に復帰できる可能性が、比較的に高いことが示唆されました。しかし、プレート固定ではなく、ワイヤー固定を選択する基準としては、体重250kg以下であることが挙げられており、また、骨折線が近位部の場合には、長いピンや螺子による骨片間圧迫(Inter-fragmentary compression)を併用し、骨折片が捻じれる恐れがある場合には、複数のテンションバンドワイヤーを使う指針が推奨されています。この症例論文において、安楽死(Euthanasia)となった四頭では、感染性関節炎(Septic arthritis)、近位骨折片の分割(Splitting of proximal fragment)、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)の際の橈骨神経麻痺(Radial nerve paralysis)やインプラント損失(Implant failure)などが原因となっていました。

一般的に、馬の尺骨骨折におけるテンションバンドワイヤー固定法において、プレート固定法よりも優れている点としては、(1)近位骨折片(Proximal fracture fragment)のサイズが小さい場合に、骨片が割れてしまう危険が少ないこと、(2)尺骨から橈骨に達する螺子挿入を用いないため、(特に六ヶ月齢未満の子馬において)この二つの骨の成長不同一性(Growth disparity)を予防できること、(3)インプラントの挿入角度が関節腔(Joint cavity)に向かっていないため、手技的なミスで関節軟骨(Articular cartilage)を医原性損傷(Iatrogenic damage)する危険性が低いこと、(4)尺骨の骨幹部の骨折の場合には、短い皮膚切開創で施術できること、(5)インプラントの値段が安いこと、などが挙げられています。

この症例論文では、22頭の患馬のうち六頭において、手根屈曲症(Carpal contraction)、皮膚切開創の離開(Skin incision dehiscence)、ピン迷入(Pin migration)などの術後合併症(Post-operative complication)を呈していました。そして、生存した18頭の患馬のうち六頭において、インプラント除去が行われ、このうち一頭はピン迷入の治療、他の五頭は肘関節異形成(Elbow dysphagia)の予防する目的で、インプラント除去が選択されました。馬の尺骨骨折に対して、テンションバンドワイヤー固定術が選択され、インプラント除去を要すると思われる症例においては、テンションバンドワイヤーにピンもしくは螺子を併用する術式では、ワイヤーのみを除去すれば十分であると提唱されており(ピンや螺子の周辺部に感染や腐骨を生じていた場合を除けば)、また、テンションバンドワイヤーのみを使う術式では、ワイヤーを残しておいても長期的予後には殆ど影響しない、という考察がなされています。

この症例論文では、テンションバンドワイヤー固定術が選択された22頭のうち、体重400kgを超えていた馬は三頭で、このうち二頭はプールを用いた麻酔覚醒によって良好な予後が達成されましたが、通常の麻酔覚醒が行われた残りの一頭は、インプラント損傷の合併症を引き起こしました。このため、特に体重が300kgを超える馬の尺骨骨折に対して、ワイヤー固定術が応用される場合には、十分な麻酔覚醒支持(Support recovery)を行うことが重要である、という考察がなされています。

この症例論文では、骨折のタイプ別の生存率を見ると、タイプ1a骨折:100%、タイプ1b骨折:75%、タイプ2骨折:75%、タイプ3骨折:100%、タイプ4骨折:66&、タイプ5骨折:80%、などとなっていました。残念ながら、それぞれの骨折タイプにおけるサンプル数が少なかったため(3~5症例)、それぞれの骨折病態における治療効果を正確に評価するのは困難でしたが、タイプ4骨折(粉砕骨折)に対しては、プレート固定術によってより堅固な骨折部の不動化(Stabilization)を選択するほうが、より良好な予後を期待できる症例が多いと考察されています。

この症例論文では、テンションバンドワイヤー固定術によって、良好な骨折治癒が達成された十二頭の患馬のうち、七頭は骨折から一週間以上経ってから手術が行われたのに対して、骨折発症から手術までが24時間以内であった患馬では、治療成功率は25%(1/4頭)であったことが報告されています。これは、重篤なタイプの骨折を呈した馬ほど、緊急搬送されて直ちに手術が行われがちで、結果的に予後も悪くなったためと推測され、内固定を要する症例に対しては、いたずらに手術を遅らせるべきではない、と提唱されています。しかし、その反面、罹患肢への合併症を続発しない限りは、患馬の全身症状の回復を待ったり、適切な術式判断のため画像診断に十分な時間を掛けても、テンションバンドワイヤー固定術の治療効果を減退させることはない、という考察もなされています。

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馬の病気:尺骨骨折

馬の文献:尺骨骨折(Clem et al. 1988)

「若齢馬の橈骨と尺骨を連結させることによる影響」
Clem MF, DeBowes RM, Douglass JP, Leipold HW, Chalman JA. The effects of fixation of the ulna to the radius in young foals. Vet Surg. 1988; 17(6): 338-345.

この研究報告では、尺骨骨折(Olecranon fracture)に対するプレート固定術(Plate fixation)において、尺骨と橈骨が連結されることの影響を評価するため、一ヶ月齢、五ヶ月齢、七ヶ月齢の子馬に、それぞれ尺骨尾側面(Caudal ulnar cortex)へのプレート固定、尺骨から橈骨に達する螺子挿入、および、その16週間後のプレート除去を実施し、レントゲン検査(Radiography)によって、この期間中における尺骨異形成(Ulna dysplasia)と肘関節亜脱臼(Elbow joint subluxation)の評価が行われました。

この研究では、橈骨関節面(Radial articular surface)と滑車切痕(Trochlear notch)までの距離が、橈骨骨端の厚さ(Thickness of distal radial epiphysis)に占める割合で、橈骨と尺骨の成長不同一性(Growth disparity)の計測が行われました(下図)。そして、全ての実験馬において、滑車切痕および鉤状突起(Coronoid process)の遠位変位(Distal displacement)に伴う、橈骨と尺骨の関節面の不適合(Incongruity between the radial and ulnar articular surfaces)が示され、橈骨と尺骨の骨性癒合(Osseous union)が認められました。そして、プレート設置から16週間目とプレート除去から16週間目の成長不同一性を比較すると、一ヶ月齢馬郡では62%から82%へ、五ヶ月齢馬郡では37%から52%というように、いずれも悪化していました。このため、尺骨と橈骨が連結されることによって生じた、この二つの骨の成長不同一性は、四ヵ月後にプレート&螺子が除去されても、完全には回復できないことが示唆されました。

一般的に、馬の橈骨近位骨端(Proximal radial physis)は、生後の三ヶ月までにその50%の成長が完了し、残りの50%の成長は生後の18ヶ月まで続くことが知られています(Cambell et al. EVJ. 1981;13:247)。そして、この研究においても、螺子挿入によって橈骨と尺骨が連結されることによる副作用は、患馬の月齢に反比例して減少する傾向が認められました。このため、生後の七ヶ月齢未満の子馬に対しては、尺骨骨折の内固定(Internal fixation)に際して、尺骨から橈骨まで達する螺子の挿入を避けたり、どうしても必要な場合でも、出来るだけ早期に螺子を除去する指針が推奨されています。一方、七ヶ月齢以上の子馬においても、この骨端軟骨が閉鎖する18ヶ月齢までに橈骨と尺骨が連結されると、成長不同一性を生じる危険性はあるものの、尺骨異形成の重篤度は最小限に抑えられるのではないか、という考察がなされています。

この研究では、一ヶ月齢馬と五ヶ月齢馬では、プレート設置から八~十週間目から顕著な跛行(Lameness)を呈し、七ヶ月齢馬は無跛行でしたが、レントゲン像上での関節軟骨の変性(Degenerative changes on articular cartilage)が見られました。また、いずれの馬郡でも、病理学的検査(Pathological examination)において、軟骨糜爛(Cartilage erosion)や軟骨下骨硬化症(Subchondral bone sclerosis)、および肘頭部の短縮化(Olecranon shortening)が認められました。これは、尺骨異形成および肘関節亜脱臼によって、上腕骨が肘頭部に押し付けられるようにして、関節軟骨および軟骨下骨の損傷を生じたためと推測されています。

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馬の病気:尺骨骨折

馬の文献:尺骨骨折(Denny et al. 1987)

Blog_Litr0310_Pict02_#05

「馬の肘頭骨折の外科的治療:25症例の比較調査」
Denny HR, Barr AR, Waterman A. Surgical treatment of fractures of the olecranon in the horse: a comparative review of 25 cases. Equine Vet J. 1987; 19(4): 319-325.

この症例報告では、肘頭骨折(Olecranon fracture)に対して、プレート固定術(Plate fixation)を介しての外科的療法、または、馬房休養(Stall rest)を介しての保存性療法(Conservative treatment)が応用された、25頭の患馬の治療成績が報告されています。

この症例報告では、肘頭骨折の病態を、タイプ1:骨端骨折(Physeal fracture)(タイプ1a:非関節性、タイプ1b:関節性)、タイプ2:単純関節性骨折(Simple articular fracture)、タイプ3:非関節性骨折(Non-articular fracture)、タイプ4:粉砕骨折(Comminuted fracture)、タイプ5:尺骨遠位幹部骨折(Distal ulnar shaft fracture)、という五種類に分類されました。

結果としては、25頭の肘頭骨折の患馬のうち、治療が試みられなかったり経過追跡(Follow-up)ができなかった二頭を除いた23頭を見ると、プレート固定術が応用された21頭では、正常歩様(“Soundness”)を回復したのは76%(16/21頭)に及んだのに対して、保存性療法が応用された2頭では、正常歩様を回復したのは50%(1/2頭)にとどまったことが報告されています。このため、馬の肘頭骨折に対しては、プレート固定術を介しての外科的療法によって、骨折治癒および予後の改善が期待され、正常歩様まで回復できる可能性が高いことが示唆されました。しかし、外科的療法の治療効果は、以下のように、骨折タイプによってかなり異なる傾向を示していました。

タイプ1bの肘頭骨折(=サルター・ハリスのタイプ2骨折:Salter-Harris Tyoe-2 fracture)を呈した一頭の患馬では、プレート固定術が応用され、跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しました。この症例報告では、タイプ1骨折の症例数が少なく、その治療成績を正確に評価するのは難しかったものの、子馬に好発する骨折であることを考慮すると、内固定術(Internal fixation)によって十分な骨折治癒が起こり、良好な予後を示す場合が多いと考えられました。

タイプ2の肘頭骨折を呈した十四頭の患馬では、十二頭に対してプレート固定術が応用され、このうち十頭は、跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しましたが、あとの二頭は再骨折(Refracture)または屈曲性肢変形症(Flexural limb deformity)で安楽死(Euthanasia)となりました。一方、保存性療法が応用された二頭では、一頭は経過追跡ができず、あとの一頭は骨折部の癒合不全(Nonunion)を起こしたことが報告されています。このため、タイプ2は馬の肘頭骨折の中でも最も発症頻度の高い病態であることが示され、プレート固定術によって、十分な骨折治癒と正常歩様を回復する症例が多いことが示唆されました。

タイプ3の肘頭骨折を呈した三頭の患馬では、全頭に対してプレート固定術が応用され、三頭ともが跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しました。この症例報告では、タイプ3骨折の症例数は少なく、その治療成績を正確に評価するのは難しかったものの、内固定法によって十分な骨折治癒が期待される場合が多いことが示唆され、骨折線が関節腔(Joint space)に達していないため、変性関節疾患(Degenerative joint disease)などの合併症を起こす危険も少ないと考えられました。

タイプ4の肘頭骨折を呈した四頭の患馬では、一頭は経済的な理由で安楽死となり、他の三頭に対してプレート固定術が応用されましたが、跛行再発を示すことなく正常歩様を回復したのは一頭のみで、あとの二頭では、持続性の慢性跛行(Persistent chronic lameness)を示したり、再骨折によって安楽死となりました。このため、馬におけるタイプ4の肘頭骨折では、内固定法が応用された場合でも、骨折の癒合不全を続発して、予後不良となる危険性が高いことが示唆されました。

タイプ5の肘頭骨折を呈した三頭の患馬では、一頭は保存性療法が応用され、跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しました。しかし、プレート固定法が応用された他の二頭では、一頭は正常歩様を回復しましたが、もう一頭は感染性関節炎(Septic arthritis)のため安楽死となり、この一頭は重度の骨折片変位(Fragment displacement)、および皮膚切開創の離開(Breakdown of skin incision)を起こしており、皮下組織および骨組織の治癒遅延から、二次性の細菌感染(Secondary bacterial infection)と関節腔への波及につながったと考察されています。

一般的に、馬の尺骨は体重支持機能(Weight support function)ではなく、上腕三頭筋(Triceps brachii muscle)からの牽引力を肘関節(Elbow joint)の伸展運動に変換する機能を有しているため、尺骨骨折の内固定に際しては、それほど強度の高いインプラントを要せず、テンションバンド作用に寄与できるだけの強度を有する、幅の狭いダイナミック・コンプレッション・プレートによって、十分な骨折整復と治癒促進が期待できることが知られています。一方、尺骨は内側は凹形(Concave medially)、外側は凸形(Convex laterally)をしているため、尺骨尾側皮質骨面(Caudal ulnar cortex)にプレートを設置する際には、その外側部にドリル穿孔&螺子挿入して、螺子尖端が尺骨内側面に突出しないように注意する必要があります。また、子馬の肘頭骨折に対するプレート固定術において、螺子が橈骨の近位成長板(Proximal growth plate)に達している場合には(特に螺子先端が頭側皮質骨まで届いている場合)、できるだけ早期にプレート除去(Plate removal)して、近位橈骨の骨端軟骨早期閉鎖(Premature closure of proximal radial physis)や肘関節亜脱臼(Elbow joint subluxation)などを予防することが重要である、と提唱されています。

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馬の文献:尺骨骨折(Donecker et al. 1984)

「肘頭骨折を呈した29頭の馬の回顧的解析」
Donecker JM, Bramlage LR, Gabel AA. Retrospective analysis of 29 fractures of the olecranon process of the equine ulna. J Am Vet Med Assoc. 1984; 185(2): 183-189.

この症例報告では、肘頭骨折(Olecranon process fracture)に対して、プレート固定術(Plate fixation)を介しての外科的療法、または、馬房休養(Stall rest)と副木バンテージ(Splint bandage)の装着を介しての保存性療法(Conservative treatment)が応用された、29頭の患馬の治療成績が報告されています。この症例報告では、肘頭骨折の病態を、タイプ1a:非関節性の骨端骨折(Non-articular physeal fracture)、タイプ1b:関節性の骨端骨折(Articular physeal fracture)、タイプ2:単純関節性骨折(Simple articular fracture)、タイプ3:非関節性骨折(Non-articular fracture)、タイプ4:粉砕骨折(Comminuted fracture)、という五種類に分類されました。

結果としては、29頭の肘頭骨折の患馬のうち、プレート固定術が応用された19頭では、生存率は74%(14/19頭)、騎乗復帰率は58%(11/19頭)に及んだのに対して、保存性療法が応用された10頭では、生存率は60%(6/10頭)、騎乗復帰率は20%(2/10頭)にとどまったことが報告されています。このため、馬の肘頭骨折に対しては、プレート固定術を介しての外科的療法によって、骨折治癒および予後の改善が期待でき、騎乗復帰する確率を向上できる可能性が示唆されました。そして、馬の肘頭骨折における保存性療法は、非関節性かつ非変位性の骨折(Non-articular and non-displaced fracture)に対してのみ選択されるべきであると提唱されています。しかし、各療法の治療効果は、以下のように、骨折タイプによって異なる傾向を示していました。

タイプ1aの肘頭骨折(=サルター・ハリスのタイプ1骨折:Salter-Harris Tyoe-1 fracture)を呈した四頭の患馬では、一頭に対してプレート固定術、もう一頭に対して副木バンテージの装着による馬房休養が応用され、いずれも跛行再発(Lameness recurrence)を示すことなく騎乗使役に復帰しました。しかし、馬房休養のみが応用されたあとの二頭はいずれも安楽死(Euthanasia)となり、この二頭は骨折片の変位(Fragment displacement)を呈していました。

タイプ1bの肘頭骨折(=サルター・ハリスのタイプ2骨折)を呈した六頭の患馬では、四頭に対してプレート固定術が応用され、このうち二頭は、跛行再発を示すことなく騎乗使役に復帰しましたが、一頭は慢性跛行による放牧時での正常歩様(Pasture soundness)のみ、残りの一頭は近位骨折片の再骨折(Re-fracture of proximal fragment)のため安楽死となりました。一方、保存性療法が応用された二頭では、一頭は慢性跛行による放牧時での正常跛行、あとの一頭は安楽死となりました。

このため、馬におけるタイプ1の肘頭骨折では、プレート固定術によって予後の改善が期待できるものの、特に関節性骨折や変位性骨折(Displaced fracture)では、骨折の治癒遅延(Delayed-union)や変性関越疾患(Degenerative joint disease)などの術後合併症(Post-operative complication)を続発して、慢性跛行が残ったり、予後不良となる場合もあることが示唆されました。

タイプ2の肘頭骨折を呈した十二頭の患馬では、九頭に対してプレート固定術が応用され、このうち七頭は、跛行再発を示すことなく騎乗使役に復帰しましたが、あとの二頭は慢性跛行による放牧時での正常歩様のみを示しました。一方、保存性療法が応用された三頭では、二頭は慢性跛行による放牧時での正常跛行、あとの一頭は安楽死となりました。

このため、タイプ2は馬の肘頭骨折の中でも最も発症頻度の高い病態であることが示され、プレート固定術によって、十分な骨折治癒と運動復帰が達成される症例が多いことが示唆されましたが、保存性療法によっても、中程度の生存率が期待できると考えられました。

タイプ3の肘頭骨折を呈した二頭の患馬では、一頭に対してプレート固定術が応用されましたが、手術の一週間後に骨折とは直接的に関係ないと見られる合併症(細菌性肺炎:Bacterial pneumonia)で安楽死となりました。一方、保存性療法が応用された一頭では、跛行再発を示すことなく騎乗使役に復帰しました。

この症例報告では、タイプ3骨折の症例数は少なく、その治療成績を正確に評価するのは難しかったものの、骨折線が関節腔(Joint space)に達していないことを考慮すると、骨折片が重度の変位を起こしている場合を除き、保存性療法によっても比較的に正常な骨折治癒が起こり、良好な予後を示す場合もありうると考えられました。

タイプ4の肘頭骨折を呈した五頭の患馬では、四頭に対してプレート固定術が応用されましたが、跛行再発を示すことなく騎乗使役に復帰したのは一頭のみで、あとの三頭では、対側肢の負重性蹄葉炎(Support laminitis on contralateral limb)、再骨折、細菌感染などによって安楽死となりました。一方、保存性療法が応用された一頭では、生存はしたものの、慢性跛行のため騎乗復帰はもとより放牧時での正常歩様も達成されませんでした。

このため、馬におけるタイプ4の肘頭骨折では、騎乗復帰を目指すのであれば、プレート固定による骨折部整復(Fracture repair)を要すると考えられますが、いずれの治療法においても、骨折の癒合不全(Nonunion)や偽関節(Pseudoarthrosis)、および対側肢の合併症を続発して、予後不良となる危険性が高いことが示唆されました。

この症例報告では、プレート固定が応用された患馬のうち、骨折発症から手術までの期間が一週間未満であった場合には、治療成功率は50%であったのに対して、骨折発症から手術までの期間が一週間以上であった場合には、治療成功率は100%であったことが報告されています。これは、重篤な骨折病態と重度跛行を呈した馬は、緊急搬送されて直ちに手術が行われるケースが多かった(=予後も悪かった)ことを反映していると考えられ、例え骨折病態や跛行が軽度であった場合でも、いたずらに手術を遅らせることで予後改善につながるわけではない、という考察がなされています。

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馬の病気:尺骨骨折

馬の文献:尺骨骨折(McGill et al. 1982)

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「馬の尺骨骨折の内固定術」
McGill CA, Hilbert BJ, Jacobs KV. Internal fixation of fractures of the ulna in the horse. Aust Vet J. 1982; 58(3): 101-114.

この症例報告では、尺骨骨折(Tuber olecranon fracture)に対して、プレート固定術(Plate fixation)やテンションバンド手法(Tension band method)などの内固定法(Internal fixation)を介しての、外科的療法が応用された七頭の患馬の治療成績が報告されています。

結果としては、プレート固定術が応用された六頭の患馬のうち、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)の際に呼吸器不全(Respiratory failure)またはインプラント破損(Implant failure)で安楽死(Euthanasia)となったのは二頭で、残りの四頭は術後の二~五ヶ月目までには“完治”したことが報告されています。このため、馬の尺骨骨折に対しては、プレート固定術による内固定法によって、十分な骨折治癒と比較的に良好な予後が期待できることが示唆されました。呼吸器不全で安楽死となった一頭は、粉砕骨折(Comminuted fracture)の病態を呈しており(残りの五頭は横骨折)、骨折整復(Fracture repair)に要した手術時間の長さや、罹患肢への体重負荷が難しく麻酔覚醒に長時間かかったことが、呼吸器不全の要因である可能性が考えられます、また、インプラント破損で安楽死となった一頭は、麻酔覚醒の遅延がインプラント破損の一因であったと推測され、いずれの症例においても骨折手術における麻酔覚醒支持(Support recovery)の重要性を、再確認させる治療成績が示されたと言えます。

この症例報告では、一頭の患馬(関節性尺骨骨折)に対して、ステインマンピンとテンションバンドワイヤーを介しての内固定術が応用されましたが、この症例は麻酔覚醒の際のインプラント破損で安楽死となったことが報告されています。他の文献では、子馬の尺骨骨折に対するテンションバンド手法によって、比較的に良好な骨折治癒が見られたという報告もありますが、安楽死となったこの患馬は二歳齢のサラブレッドで、テンションバンドのみでの内固定では、骨折整復部の強度が不十分であったと考えられました。また、ステインマンピンと皮質骨螺子(Cortical bone screw)を併用して骨片間圧迫(Inter-fragmentary compression)を実施した場合には、より堅固な内固定が達成できた可能性もあります。

この症例報告では、一頭の患馬に対して、馬房休養(Stall rest)のみによる保存性療法(Conservative treatment)が応用され、骨折から五ヶ月目までに“完治”したことが報告されています。この患馬は、八ヶ月齢のサラブレッドの子馬で、両側性の粉砕骨折(Bilateral comminuted fracture)を呈していましたが、近位骨折片(Proximal fragment)のサイズが小さかったため、内固定法なしでも十分な二次性骨折治癒(Secondary fracture healing)が達成されたものと推測されています。しかし、この患馬は関節性骨折(Intra-articular fracture)の病態を呈しており、長期経過(Long-term follow-up)において肘関節(Elbow joint)の変性関節疾患(Degenerative joint disease)を続発したか否かは、詳細には報告されていません。

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馬の文献:尺骨骨折(Monin. 1978)

「馬の肘頭骨折の外科的治療」
Monin T. Repair of physeal fractures of the tuber olecranon in the horse, using a tension band method. J Am Vet Med Assoc. 1978; 172(3): 287-290.

この症例報告では、肘頭隆起骨折(Tuber olecranon fracture)に対して、テンションバンド手法(Tension band method)を介しての外科的療法が応用された四頭の子馬の治療成績が報告されています。

患馬は90~425日齢の子馬で(体重68~273kg)、重度の跛行と肘脱落(Dropped elbow)の所見を示し、レントゲン検査によって、二頭では肘頭の骨端骨折(Physeal fracture)(=サルター・ハリスのタイプ1骨折:Salter-Harris Tyoe-1 fracture)、あとの二頭では骨端骨折と肘突起(Anconeal process)に達する肘頭長軸骨折(Longitudinal olecranon fracture)(=サルター・ハリスのタイプ2骨折)の発症が確認されました。

治療としては、皮質骨螺子(Cortical bone screw)とステインマンピンを骨端骨折片から遠位骨折片に挿入することで骨折部が整復され、ピンの背側を通したステンレスワイヤーを、尺骨掌側面(Cranial surface of ulna)に伸展させて、肘頭から遠位側へ10cmの位置に穿孔させたドリル孔へと八の字を描くように固定して、両骨片間にテンションバンド機能を作用させました。

四頭の患馬のうち一頭は、手術直後から罹患肢への充分な体重負荷(Sufficient weight bearing)を示し、残りの三頭も術後の三週間目までには罹患肢へ体重負荷ができるようになりました。そして、四頭の患馬のいずれも、十分な骨折治癒と良好な予後を示し、繁殖牝馬(Broodmare)または乗用馬として騎乗に使役されたことが報告されています。

一般的に、子馬の尺骨における骨端骨折では、骨のサイズが小さくプレート固定術(Plate fixation)の応用は困難で、また、保存性療法(Conservative treatment)では十分な骨折治癒が期待できないことが知られています。この症例報告では、螺子固定とテンションバンド手法を組み合わせた術式によって、良好な治療成績が示され、子馬の肘頭骨端骨折の外科的療法において、有用な術式であることが示唆されました。

この症例報告では、四頭の患馬はいずれも、骨折発症から速やかに外科的療法が応用されており、骨折片の変位(Fracture fragment displacement)は殆ど起きていませんでした。しかし、骨折の発生から手術までに五日以上経過した場合には、完全な骨折部の外科的整復は難しい場合が多く、予後不良を呈しやすいと考察されています。

この症例報告では、四頭の患馬のうち三頭において、術後の三週間にわたって跛行が継続しており、螺子+テンションバンドによる内固定では、骨折箇所の完全な不動化(Complete stabilization)は達成できなかった可能性もあると考えられました。しかし、馬の尺骨は直接的に体重を支える機能を担っていないため、骨折部の微細動揺(Micro-motion)が残った場合でも、十分な二次性骨治癒(Secondary bone healing)が起きたと推測されます。

一般的に、肘頭骨端骨折の内固定術において、成長板(Growth plate)を通過するように螺子挿入された場合には、早発性骨端軟骨閉鎖(Premature physeal closure)の術後合併症(Post-operative complication)を起こす危険性が考慮されます。この症例報告では、経過追跡(Follow-up)でのレントゲン再検査でも、骨端軟骨閉鎖は認められませんでしたが、全ての肘頭骨端骨折の症例に対して、経時的なレントゲン検査による慎重なモニタリングを行うことが重要である、という考察がなされています。

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馬の病気:尺骨骨折

馬の文献:尺骨骨折(Denny. 1976)

「馬の肘頭骨折の外科的治療」
Denny HR. The surgical treatment of fractures of the olecranon in the horse. Equine Vet J. 1976; 8(1): 20-25.

この症例報告では、肘頭骨折(Olecranon fracture)に対してプレート固定術(Plate fixation)を介しての外科的療法が応用された四頭の馬の治療成績が報告されています。

一頭目の患馬は、二歳齢のアラビアンで、蹴傷の病歴で来院し、レントゲン検査によって、右前肢の肘頭の単純斜位骨折(Simple oblique fracture)(骨片変位なし)の発症が確認されました。治療としては、全身麻酔下(Under general anesthesia)でのプレート固定による骨折整復(Fracture repair)が行われ、手術の翌日から罹患肢への体重負荷が可能になり、術後十週間目のレントゲン再検査で完全な骨癒合(Bony union)が認められ、術後22ヶ月目においても跛行再発(Lameness recurrence)を示さず、良好な予後が達成されたことが報告されています。

二頭目の患馬は、四ヶ月齢のハンター牡馬で、重度跛行の病歴で来院し(原因は不明)、レントゲン検査によって、右前肢の肘頭における非変位性の単純斜位骨折の発症が確認されました。治療としては、全身麻酔下でのプレート固定による骨折整復が行われ、術後の十日目において皮膚切開創傷の離開および螺子損傷が認められましたが、八週間目のレントゲン再検査で十分な骨折治癒が認められたことから、プレート除去が行われ、術後18ヶ月目においても跛行再発を示さず、良好な予後が達成されたことが報告されています。

三頭目の患馬は、十歳齢のポニー去勢馬で、交通事故(Car accident)の病歴で来院し、レントゲン検査によって、右前肢の肘頭の斜位骨折、橈骨の外側部骨折(Fracture of lateral aspect radius)、肘関節の亜脱臼(Elbow joint subluxation)の発症が確認されました。治療としては、全身麻酔下でのプレート固定による肘頭骨折の整復、螺子固定術(Lag screw fixation)による橈骨骨折の整復が行われ、術後四週間目から罹患肢への体重負荷が可能になり、この時点でのレントゲン再検査では、肘頭骨折は治癒していましたが、橈骨骨折片の変位が見られました。しかし、術後九週間目のレントゲン再検査では、橈骨骨折も十分に治癒したことが確認され、七ヶ月目にプレート除去された後は、跛行再発を示さず、良好な予後が達成されたことが報告されています。

四頭目の患馬は、二歳齢のウェルシュポニー牝馬で、蹴傷の病歴で来院し、レントゲン検査によって、右前肢の肘頭の斜位骨折および肘突起(Anconeal process)の骨折の発症が確認されました。治療としては、全身麻酔下でのプレート固定による肘頭骨折の整復と、肘突起骨折片の摘出が行われ、術後七週間目のレントゲン再検査では、十分な骨折治癒が示されましたが、肘突起摘出部における過剰な仮骨形成(Excessive callus formation)が見られたため、この仮骨およびプレートの除去が行われ、患馬はその後、術後17ヶ月目においても跛行再発を示さず、良好な予後が達成されたことが報告されています。

一般的に、馬の尺骨骨折は、馬に見られる長骨骨折(Long-bone fracture)の中でも、外科的療法によって良好な予後が期待できる病態である事が知られており、この最大の要因としては、尺骨が体重負荷機能(Weight-bearing function)ではなく、筋肉や腱の牽引力を肘関節の伸展へと変換する機能を有しているため、それほど強度の高いインプラントを要しないことが挙げられています。この症例報告は、内固定の術式や整形外科感染(Orthopedic infection)の治療法がそれほど発達していなかった時代の論文であるにも関わらず、四頭の症例の全頭が良好な予後を示しており(生存率:100%)、また、四頭のいずれの患馬においても骨折整復後の比較的に早い時期に体重負荷が可能となっており、尺骨骨折が非常に良い予後を示すこと、尺骨が体重負荷機能を有しない長骨であることが良好骨折治癒に寄与していること、などが裏付けられると考えられます。

この症例報告では、四頭とも骨折片変位の少ない斜位骨折の病態であったため、内固定の手技的難易度がそれほど高くなく、良好な骨折治癒を誘導しやすかったと推測されます。このため、変位性骨折(Displaced fracture)やより複雑な骨折病態に対する外科的療法の術式に関しては、更なる検討を要する場合もあると考えられました。

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